第29章 Summer Time!〈遠坂 雪音〉
菖蒲が無事に帰ってきて、栗花落家のお婆様筆頭に関係者は全員お縄につき、婚姻関係を結ぼうとしていた相手の家も纏めてお縄についたらしく、やっと平穏が訪れた。菖蒲は兼ねてから海に行く予定だった様だが、一緒に行っても良かったけど2人を邪魔したくなかったので、日付をずらして剣城と2人でプールへ行く事になった。
『水着…どうしよ』
正直に言うと、水着選びに迷っていた。まさかスク水で行くなんて事したくないし、でも自分一人で水着を選ぶのも気が引ける。しかし着実にプールへ行く日は近付いていた。しかしこうなったらもう大人に頼るしかない。
『も、もしもし、瑠璃さん』
「あら、どうしたの〜?」
『そ、その。今度剣城と海に行く約束をしてて、それで水着を…』
「そっかそっかぁ。その様子だと剣城君と上手くいってるみたいだね」
『も、もう茶化さないでください』
「ふふ、ごめんね。可愛くてつい。水着だよね。もし良かったら今から一緒に見に行かない?」
『良いんですか⁉︎』
「勿論。迎えに行くね。準備してて」
『分かりました!』
まさかの瑠璃さんの行動力に押されつつも、水着を選ぶために急いで準備した。
「あきちゃんやっほー!雪音ちゃんいる?」
「あらあら、瑠璃ちゃん久し振りね。雪音ちゃんならもうすぐ来ると思うわ」
『瑠璃さん!お待たせしちゃってごめんなさい!』
「今来たとこだから大丈夫って…なんか私達デートするみたいだね!」
『えぇ⁉︎』
「よし、今日は私とデートだね!雪音ちゃん!」
いきなり茶番が始まったかと思えば、腕を引かれて外へ飛び出した。瑠璃さんは始終ルンルンで、スキップでも始めそうな感じだった。
「雪音ちゃんのイメージだとここのお店が良いと思うんだよね」
『確かに、私が好きなテイストです』
「でしょ〜?伊達にお姉さんしてないんだよね〜!」
『おぉ…』
「ま、取り敢えず決めていこうよ。雪音ちゃんの好きな色から決めていったら?」
『私の好きな色…』
なんとなく頭に思い浮かんだのが紫と黒だった。思いっきり剣城に侵食されてる気がする。気のせいかな。
『あ…』
「それ、気になった?」
『いや、えっと…その』
「良いんだよ。自分の好きに嘘はつかないで。それにそれ、『剣城の女』って言ってるみたいだね」
瑠璃さんにそう言われて急に顔が熱くなった。そんなつもりはなかったのに意識してしまう。