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Diva!【イナズマイレブンGO】

第26章 Sports festival!〈栗花落 菖蒲〉


「菖蒲、大人」
『違うよ。物分かりが良い様に見せたいだけ』
「僕の前じゃ必要ないでしょ」

顔を上げると、眩しくてキラキラしてる笑顔がそこにあった。そう、分かってたの。太陽の前じゃ、こんな下らない気持ちなんて、必要ないって。分かってるのに。

『でも、捨てられない』
「それでも良いよ」
『私、きっと面倒臭い』
「そんなの百も承知で付き合ってる」
『…好き』

瞼に優しいキスが一つ。太陽ってどうしてこんなに優しくてあったかいんだろう。

「僕も」
『なんか、どうでも良くなっちゃった』
「うん!」
『ありがとう。太陽』
「何もしてないよ」

本当、そういうところなの。そういう所に無意識に惹かれていったの。

『もう少しだけ…一緒に居て良いですか』
「勿論」

体育館脇の人気のない所に座り込んだ。暑い癖に太陽の肩にこてんと寄り掛かった。

『ねぇ、太陽』
「何?」
『私、もしかしたら…戻ってこれないかもしれない』
「どういう事?」
『実家から…戻ってこれないかもしれない』
「…どうして?」
『16だから』
「菖蒲のお家は厳しいんだっけ」
『厳しいってもんじゃない。あれは…最早宗教だと思う。だから私達家族はあの家から逃げてきた』

実家は嫌いだ。けれど戻らなければならない。それを条件に私達は街まで逃げたのだから。

『16になれば勝手に婚約者が決められるの。うちの家、村では一番権力持ってるらしくて、そのせいか厳格なルールまで構成されてる。そのルールを作ったのはうちの祖母…って言うのも憚られるけど』
「じゃあ…」
『私は何があろうと、その婚約者と一緒になる気はない。だって、隣の彼氏さんがいらっしゃいますから』
「うん」
『でもあのババアは基本人の話を聞かない独裁者スタイルだから、私達の意見なんてどうでもいい。自分の意見さえ罷り通ればそれで良いと思ってるから。だから思い出は、これが最後かもしれない。ごめん。海に行く約束だってしてたのに』
「大丈夫。そんな事になったら、絶対に迎えに行く」

ほら。そうやって容赦なく私に手を差し伸べるの。どうしようもなく手を取ってしまう私も私だけど。

『うん』
「絶対に海に行く」
『うん』
「だから大丈夫」
『信じる』
「信じて」

高校生の他愛の無い約束。それでも信じられるのは君だから。

『約束。海に行こう。絶対』
「勿論」

指切りした夏。
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