第25章 Spinning!〈遠坂 雪音〉
「かっわい〜‼︎」
「綺麗よ。雪音」
『そ、そうですかね…?』
姿見の前でくるりと回った。ラベンダーの色を背景色に、白い椿が咲き誇っている。瑠璃さんのお下がりらしい。
「じゃあ、髪は私がやる」
『玲奈さん』
「そこに座ってて」
私の髪の毛は量が多くてふわふわしているらしい。玲奈さんは、私の髪をまず二つに分けた。
「随分綺麗になったわね」
『そうですか?』
「ええ。とても」
そう言いながら櫛で髪を梳かしていく。分けた片方はゆるくゴムで結び、もう片方は高めに結んだ。
『ツインテールですか?』
「少し違うわ」
「玲奈ちゃん器用だからねぇ。なんでも出来ちゃうし」
『本当ですよね』
「まぁ、瑠璃よりはまだちゃんとしてる」
「えっ…酷い」
いつものやりとりを流しつつ、鏡越しに玲奈さんの手付きを見ていた。結んだ所から三つ編みをしていき、最後まで多少キツめに編んでいる。
「こうやって巻いたら可愛いでしょ」
グルグルと螺旋の様に結び目から回していく。最後にピンで最後の部分を隠せば終わり。それをもう片方やる。触角は程よく巻いて、あまりギャルっぽくならない様に。
「流石玲奈ちゃん」
『凄いです…』
「こんな所ね。結構簡単だから、雪音も出来ると思うけど」
『今度やってみますね』
「ええ。もうそろそろ時間じゃない?」
『本当だ…リップ塗らなきゃ』
まずは普通のリップクリームを塗っていく。唇の輪郭を消すために、コンシーラーを使う。囲う様に塗っていき、後は指で馴染ませた。赤みが強いリップを下唇の内側だけ塗っていき、数回上唇とくっつけていく。更に濃い色を重ねて塗り、最後にリップグロスを塗って完成。
「雪音。お迎え来てる」
『は、はーい』
かごバッグの中にはポーチ、携帯、クリップ類、ハンカチとティッシュ。そしてお財布。
「外で待ってるって」
『分かりました』
下駄に足を通して、お日さま園の扉を開けた。カランコロンと涼しげな音が心地良い。
『やっほ』
「あ、ああ」
『ちょっと、そんな緊張しないでよ。気まずくなる』
「い、いや…」
『?』
「可愛い」
顔…真っ赤…。っていうかこっちまで赤くなっちゃう…。
『あ、ありがと。そっちも…似合ってるんじゃないの…』
剣城もちゃんと浴衣を着ていて、似合っている…と思う。
「行くか」
『うん』
ゆっくりと、歩き出した。