第24章 Luster!〈栗花落 菖蒲〉£
翌朝、目を覚ますと目の前に太陽の寝顔があった。起こさない様にそっと抜け出て下に降りる。
『朝は…軽くでいっか』
時計を見ると、いつも通りの7時半を指している。まだ少し眠いが…それでも目が覚めてしまうので仕方ない。他人の家なので慣れないが、少量油を引いて、昨日買っておいた食材のうち、ウインナーを焼き始める。じゅうじゅうと美味しそうな音がリビングに響いた。
「ん…菖蒲?」
『おはよう。太陽。もうすぐできるけど…顔洗ってきたら?』
「んーそうする」
寝ぼけた太陽もちょっと面白いな。寝癖がついてて、冴え切ってないっていうか。
『目、覚めた?』
「なんか菖蒲…」
『な、何…?』
「奥さんみたい」
『なっ…⁉︎』
唐突に言われて、また動揺してしまう。良い加減治さなきゃいけないのに。でも、ちょっと嬉しいのは内緒にしておこう。
「だって、新婚さんとかこんな感じなんでしょ」
『そ、それはよく分からないけど…というか!早く座って!ご飯出来てるから!』
太陽を椅子に座らせて皿に持ったウインナーとパンを出す。太陽の家がいつもどんな感じで食べてるか分からないからいつもの私の家風になっちゃったけど。
『起こしちゃった?』
「なんとなく…菖蒲の温もり無いなって」
『起こさない様に出たつもりだったけど…それでバレるのか…』
「今日はどうする?」
『うーん…昨日全然勉強しなかったし、今日こそやるから』
「げっ…」
『分からない所は教えるから、一緒に頑張ろう』
「はーい」
その後、私服に着替えて、夕方までみっちり勉強した。太陽は推薦で入っていたので、所々危ない所があった。予習という事で太陽の苦手な数学から始めたが、やっぱり高校数学は中学とは桁違いだと思い知ったらしい。
「はぁ〜」
『そろそろ帰らなくちゃ』
「送ってくよ」
『ありがと』
帰る準備は整っているので、鞄を持って、太陽の両親に挨拶をした。
『お世話になりました』
「良いのよ。また来てね。いつでも待ってるわ」
『はい。あ、あの…ほんの気持ちなんですけど』
「あら…どうもありがとう!」
『本当にありがとうございました』
「ええ、こちらこそありがとう」
太陽の家を出て、歩き出した。
『楽しかったよ。ありがと』
「うん」
最後に少しだけ…意地悪。
『大好きだよ、太陽』
家に入る直前、耳元で囁いて、そっと唇を重ねた。