第22章 Flower!〈栗花落 菖蒲〉
そろそろ良い時間になってきたので、寝る事にした。
『私、床で良いよ』
「ダメダメ!女の子床に寝かせるなんて!」
『い、いや…気にしないし…』
「良いから!ベッドで寝てよ!僕が床で寝るから!」
『う、うーん…』
かと言って、太陽を冷たい床に寝せる訳にも…。風邪とか引かれたら困るし…。
『あ、あのさ。嫌じゃ無かったらの話なんだけど』
「うん?」
『い、一緒にベッドに寝る…?』
「菖蒲」
『な、何?』
「それ、反則」
そのままお姫様抱っこで抱き抱えられて、ベッドに下された。私を見下ろしながら、片手でリモコンで電気を消していく。
『あ、あの。太陽…くん…?』
「我慢、出来なくなっちゃうよ」
『え、えっと…』
何となく予想はしていた。付き合ってからもう三年経つ。こういう行為だってやっても良い…とは思う。ただ、お母さんとお父さんが心配してるのは、きっとこういう事で。
『ひ、避妊してくれるなら、良いよ』
「勿論。まだ背負って行ける年齢じゃない。それに何より、菖蒲を傷付けたく無いんだ」
『…うん』
「ちゃんと用意はしてあるから」
ベッドに付属している引き出しの中にコンドームの箱が置かれていた。
「でもまずは」
忙しなく口付けが降ってくる。流星群の様に目がチカチカしてしまう。唇を塞ぐという単純な行為の癖して、こんなに愛情を感じさせる。なんて行為なんだ!と思いつつも、太陽に身を委ねた。
『あ、あの…何でこんなに手慣れて…』
「うーん、練習かな」
『れっ…練習⁉︎』
「そう、男には、色々と準備も必要だから。彼女を傷付けない為に、ね」
よ、良くわからないが…取り敢えず練習をしているらしい。わ、私もそういうのを練習した方が…。いや、何の練習しろと?
「他の事考えてる?」
『い、いや…そのっ…!』
「余裕…あるね?」
ジッパーを下げて、私の上半身は殆ど見える様になってしまった。
「可愛い」
髪と同じ色のブラジャーをまじまじと見つめている。イエローグリーンのそれはずり上げられてしまい、意味を為していなかった。
『ちょ、ちょっと…!』
「触るよ」
暖かい手が、双丘を揉みしだいていく。当の私はあられもない声を上げる事しかできなかった。
「ねぇ、もう良いよね?」
彼の瞳の奥に炎が灯った。その炎が始まりの鐘を鳴らす事も知らずに、私は肯いてしまった。