第21章 Heat!〈遠坂 雪音〉
『分かりました。ありがとうございます』
秋さんに軽く会釈をして二階に戻り、勉強で時間を潰した。4時になったので、さっさと風呂に入る事にする。あんまり遅い時間に誰かとばったりとか避けたいし。
『はぁ…』
脱衣所に行って、ツインテールのゴムを解く。重みのある髪が少しうざったい様な気もするが、私はこの髪が好きだ。ここ何年か全く切っていない。少なくとも6年は切っていないだろう。毛先揃えるくらいには偶に切るけど、単純計算では、大体70cm位の長さだ。
『…よし』
お風呂にも入り終わって、部屋に戻る事にした。そろそろ天馬達が帰ってくる時間だろうか。
「ただいまー!」
おお、ナイスタイミング。
「お邪魔します」
げっ…また来たのか…。そんな律儀に来なくても…。
『お帰り、天馬』
玄関で迎え入れると、何故か剣城が顔を真っ赤にして固まってる。
「どうしたの?剣城」
「い、いや…何でもない」
靴を脱いで、二人とも上がってきた。今日は部活動の体験には行かなかったのだろうか。
『二人とも、体験入部行かなかったの?』
「うん。今日はお休み」
ま、その日の気分っていうのもあるだろうし、別に良いか。
『暇だと思うけど、私の部屋に来る?』
というか、暇過ぎて倒れる位に持て余している。天馬がいるから、剣城が居てもまぁ我慢できるだろう。
「行く!」
剣城も頷いて二階へ登ってきた。
『と言っても…3人で出来る事って…』
「あ、俺トランプある!」
『おー!良いじゃん!』
「持ってくる?」
『頼んだ』
勢いで言ってしまったものの、此奴と二人きりになるとは考えて無かった…!
「雪音」
『何?』
若干不機嫌そうに見せかけて返した。菖蒲にこの状況見られたら良い加減にしなさいって怒られそうだけど。
「この状態が終わったら、出掛けるぞ」
『え、何それ聞いてない』
「今言ったからな」
『え、嫌です』
いやいや、これは拒否るでしょ、流石に。じゃ無かったらヤバイて。
「きょ…拒否権は無い」
『何それ。ちょっとじわる』
後から付け足した感じがちょっと面白い。深くにも少し笑ってしまったではないか。
『分かった。その後付けの面白さに免じて、一日だけ付き合ったげる』
何その勝ち誇った様な表情は。こっちが許可したんだからね!でも…剣城の事を分かろうとするのも必要かもしれない。