第20章 Ripple!〈栗花落 菖蒲〉
小さい時からずっと隣に居て。辛かった時も、楽しい時も、ずっと一緒だった。
『でも…太陽に初めて会った時、凄く不思議だった。どうして私に声を掛けてくれたのかなって。学校だと、いつも怖いって思われてたから』
「そうかなぁ?菖蒲、初めて見た時に凄く綺麗だって思ったんだけど」
此奴は本当にっ…!何でそう小っ恥ずかしい事をサラッと…!
『そ、そういうのは良いから…!本当に!』
「あはは…でも、あの時、菖蒲少し哀しそうだったんだ。何でだか分からないけど、そんな気がしてた」
『それ言うなら太陽だって』
あの時凄く儚く見えたのは、自分のサッカーの未来について悩んでいたのかもしれない。
『や、やっぱり何でもない。もう、電話切るよ?そろそろお風呂入らないと』
「うん、じゃあ最後に」
『?』
「愛してる、菖蒲」
『なっ…なぁっ…⁉︎』
ツーツーと電話の切れた音が部屋に響き渡っているのに、私の脳内では最後の太陽の言葉が無限ループしている。
「愛してる、菖蒲」
今迄、好き、とか、レベルアップしても大好き位だったのに、さらにレベルアップしてる…。どうしよう。顔が熱い。太陽は、恥ずかしく無いのかな。私は…好きって言われただけでも動揺しちゃうのに。
「菖蒲ーお風呂ー」
『は、はーい』
急いで熱を引っ込めて、お風呂に入る準備をした。大好きなシナ◯ロールのパジャマを持って、急いで階段を下る。
「あ、菖蒲のお気に入りのパジャマだ。太陽君家に行く時にもそれ持ってくの?」
『え、う〜ん…ちょっと恥ずかしいから別のにする』
「ふ〜ん、そっか〜」
なーんか含みのある言い方だなぁ。ま、いっか。気にしなくて。
『ふぅぁ〜』
そんな姉を流し目に、お風呂に入ると、気の抜けた声が出てくる。それでもふとした瞬間に思い出す太陽の声は、一度思い出すとループを始めてしまう。それだけ私はきっと…太陽が好きだ。でも、太陽が私を思う程に、私が太陽に「好き」をあげられているのか…よく分からない。それでも、ずっと一緒にいたい、隣に居たいと思える異性は間違い無く太陽だけで。
『好き…』
息が9割型の声でそっと囁いてみた。高校生になったら、一体どういう事がパワーアップするのか、よく分からない。一般的にJKというものは青春真っ盛りらしい。それらしい事はよく分からないけど…それでも、彼女として、出来る事を少しずつ。