第2章 Darkness!〈遠坂 雪音〉
また、ピンクの髪をした千宮路という人の元に連れて来られた。
「やれ」
「はい」
また、昨日と同じ様に薬を打たれた。どうしよう…また…昨日と同じ事をするのだろうか。だとしたら…私は…。
『い、嫌です…!』
「君に拒否権はない」
きっと抵抗するだけ無駄、という物なのだろう。耐えるしか無いのだろうか。でも、麻乃さんが言ってた。諦めちゃ駄目だって。
『うっ…うぅ…』
「連れて行け」
『あっ…』
薬を投入してすぐ、また連れて行かれた。午前中は基礎特訓。午後は試合形式で練習。お昼は一時間の間で済ませる。お昼は食堂で出してくれるみたいで、自由に座っていい様だった。
「ここ、空いているか?」
『へっ?あっ…はい…!』
「お前がグランドランクシードか」
『は、はい』
「ハッキリしない奴だな」
『えっと…』
「おい、白竜。怖がってるだろ」
「剣城」
『あ…昨日の…』
そのまま何も言わずに向かいの席に座ってきた。
「お前は一体何者だ?」
『え、えっと…』
「白竜」
「とことん甘い奴だ」
『すみません…自分でも何が何だか…』
「何だ?記憶喪失にでもなってるのか?」
『そういう訳じゃ…』
初めは白竜さんも私を疑っていたけれど、次第にこの三人でお昼を食べるのが日課になっていった。
『うっ…』
「何だ、もう満腹なのか?」
『元々少食なので…』
「おい剣城、そっちを食べろ」
「はぁ?何で俺が…」
『え、二人とも食べて下さるんですか?』
「うっ…」
「ほら、早くしろ」
「くそっ…」
ある時、その幸せな時間は崩されてしまったのだ。剣城君はゴッドエデンを出て、雷門中へ派遣される事に。白竜君はアンリミテッドシャイニングというチームのキャプテンになった為、これからのスケジュールが変わる。私は相も変わらず毎日ファーストランクシードと手合わせをしていた。
「さっさと動け!」
『はい…』
二人を心の支えにしていた事もあり、寂しい気持ちだけが残っていた。
『いつになったら…此処を出られるんでしょうか…』
「…分からない」
麻乃さんはいつも優しく笑ってくれた。でも、菖蒲ちゃんやお日さま園の皆にも会えないなんて、そんなの嫌だ。そう思っていた矢先、新しい指令が出た。
「フィフスセクター本部に戻れ」
『え…?』
つまりはゴッドエデンから出なくてはならない。麻乃さんとも会えなくなった。