第17章 Loss!〈遠坂 雪音〉
「なぁ、聞いたか?」
「何がだよ」
「今日、帝国の生徒会が雷門に来るんだってよ」
「はぁ?何の為に?」
「何でも、雷門と帝国の合同文化祭だと」
噂する人達の前を通り抜けて、雷門の校門を潜った。軍帽を深く被り、帝国生徒会を引き連れて理事長室へと歩いて行く。
『こんにちは。帝国学園、生徒会長の北大路 雪音です』
「お待ちしておりました。さぁ、こちらです」
帝国のボックスプリーツのスカートに、生徒会のみ着用が許されるケープを翻して、雷門中生徒会へと向かう。
「雪音、資料は?」
『勿論。ちゃんと持ってきてる』
「大丈夫そうだね」
『まぁね。簡単な口約束で合同文化祭が出来ちゃう辺り、親睦の深さが窺える』
私は中学1年の夏に交通事故に遭い、目覚めた中学2年生の春には菖蒲以外の記憶は無かった。恐らく、菖蒲が私の生活に一番深く関わっているからだろうという医師の見解だ。
『こんにちは。帝国学園生徒会です』
「ようこそ雷門中へ。どうぞお座り下さい」
恐らく雷門中の生徒会長だと思われる人の言う通りに用意された席に着いた。
「先ずは自己紹介から始めましょうか。私は小鳥遊 桃花です。雷門中で生徒会長を務めています。宜しくお願いしますね」
「副会長の夜蝶 空音です」
一見生徒会長はパッとしない様にも見えるが、相当優秀な人だと伺っている。それこそ帝国に居てもおかしくない様な。副会長も同様に優秀と伺って居るが、回ってきた情報が少な過ぎて余りわからない。
『それでは此方も。帝国学園2年の北大路 雪音です。帝国で生徒会長をさせて頂いています。宜しくお願いします』
「同じく副会長の栗花落 菖蒲です」
今回の議題は、それぞれの役割の決定。そして場所の確保。これを両学校の理事長、又は総帥と話して決める。
『それでは今回、先ずは実行委員長を決めなくてはなりませんが…立候補はありますか?』
特に相手方には実行委員長をしようという気概は見られない。なら、私がやるか。
『それでは私が実行委員長を務めさせて頂いても宜しいでしょうか』
「お願いします」
『出来れば、副委員長は雷門の方にお願いしたいんですが…』
「では、私がやります」
私が実行委員長。雷門の小鳥遊さんが副委員長という事で話はあっさり解決し、それ以外の役割は会計等の役割について貰う事で安定した。後は場所である。