第15章 Cooperation!〈栗花落 菖蒲〉
ーー翌日 〈side 太陽〉
目覚めると、隣りに菖蒲は居なかった。まだ温もりはあったから、そんなに時間は経ってない。
『菖蒲…?』
ベッドを抜け出してみると、少なくとも部屋の中には居ないという事が分かった。トイレ…?お風呂…は昨日入ったし、取り敢えず下に降りよう。
『菖蒲…?』
「太陽、おはよう」
『あ、菖蒲⁉︎そ、その格好は…』
「朝御飯、一緒に作ってくれてるのよ。菖蒲ちゃん、やっぱり凄いわねぇ」
「そ、そんな事ないです…!」
「将来、良いお嫁さんになりそうね」
「へっ…⁉︎いや、あの…!」
「ふふっ!可愛い!ウチの子にしたいわ」
『ちょっと、母さん!』
確かにずっと家に居て欲しい。毎日朝起きた時に菖蒲が隣りにいて、菖蒲が作った朝ごはんを食べて。それで一緒に学校に行って。ああ、幸せだな…。
「ちょっと、太陽。ぼーっとしてないで、早くご飯食べよう?折角作ったのに、冷めちゃうよ?」
『え、あ、うん!』
朝から破壊力抜群の格好をして、心配そうに見つめる彼女が本当にかわいすぎる。何時もはツンツンしているけど、偶に見せるデレがもう堪らない。
『ご馳走さま!』
「食器洗い、お手伝いします」
「ごめんね、お客さんなのに…」
「いえ…泊めて頂いた分、これだけでもお手伝いさせて下さい」
「ありがとう。お願いするわ」
「はい」
菖蒲は、しっかりしてる。けど、結構抜けてたりする事も多くて、そんな所も僕がサポート出来れば良い、なんて思ってしまう。
『菖蒲、それ終わったら、ちょっと出掛けようよ』
「何処に?」
『ちょっとそこまで』
偶には自由気儘に散歩してみるのも楽しいかもしれない。菖蒲と二人で色んな事を話して。
「良いよ。行こっか」
『うん!』
緑の綺麗なポニーテールを揺らして振り向く彼女がやっぱり好きだ。瑞々しい菖蒲の茎や葉を連想させる艶やかな髪に、潤しく咲く菖蒲の花の様な瞳。透き通る様な白い肌。全部が、和風の美人「大和撫子」そのものだった。
『行こう!』
「え、ちょっと!着替えないと!」
『大丈夫!』
根拠のない自信だと、自分でも思う。けれど、それが菖蒲を笑顔に出来ると信じて。
「大好き!菖蒲!」
『ば、馬鹿!声デカいから!』
そうやって僕の前だけで頬を赤らめて照れてくれる姿を独り占め出来るのが堪らなく嬉しい。だから、これからもずっと隣に…。