第14章 Tears!〈遠坂 雪音〉
リビングに向かって、歩き出した。
『瑠璃さん。ヒロトさん。お話があるんです』
「どうしたんだい?雪音ちゃん」
『私は、狩屋君を筆頭にサッカーを愛する心を見失ってしまった人達を取り戻したい。だから、これから力をつける為に、暫くお日さま園には戻りません。許可して下さい』
「分かったよ。雪音ちゃん」
「瑠璃…」
「ヒロト君。女の子には、何かをやりたい、やり遂げたいっていう気持ちが芽生える時が来るの。私もそうだった様に。だから、ヒロト君も認めてあげて欲しいの」
「…分かった」
『ありがとうございます…!』
「なるべく速く戻ってくるんだよ」
『はい!』
「辛くなったらいつでも戻って来て良いんだからね」
『大丈夫です!それでは行ってきます!』
「待って、雪音ちゃん」
二人共玄関に出迎えに来てくれた。後ろを振り向くと、両頬に優しいキスが降ってきた。
『瑠璃さん、ヒロトさん…』
「私達は、雪音ちゃんの事心配してる。でも、それ以上に愛してるの。だから、信じてるよ!行ってらっしゃい!」
『行ってきます!』
トントンとスニーカーで爪先の方へ詰める。雷門のジャージを羽織って、重いカバンをよいしょと肩にかける。
『絶対に、戻ってきます』
「当たり前だ。待ってるからね」
『はい!』
玄関を飛び出して、急いで木枯らし荘へ向かう。すると、皆はウンウン唸りながら覇者の聖典を解読しようと試みていた。
『皆さん、お待たせしました』
「雪音。大丈夫なのか」
『はい。もう大丈夫です。覇者の聖典の方はどうですか?』
「さっぱりだ」
『少し見せて頂いても構いませんか?』
「勿論」
『部分的になら何とか読み取る事ができますが…はっきりとは難しいですね…』
「部分的でも分かるのか⁉︎」
『何となく。この方はどうやら字を重ねて書く傾向があるようです。それを利用して、重なったパーツを一つのパーツとして読む事が出来ればちゃんと解読できると思いますよ。本当に誰も解読が出来なかったのですか?』
「何だか、雪音が凄い人だって事はなんとなく分かったよ…」
題名が覇者の聖典で間違い無いのであれば、中身もきちんと読めば解読できるはず。余りにも研究脳だったから軟らかさに欠けてしまったのかもしれない。
『でも、一番手っ取り早いのは…』
「皆!差し入れ持って来たわよ!」
丁度良いタイミングで、秋さんが部屋に来た。