【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第149章 ◇第百四十八話◇命懸けの幸せを守るために走れ【女型の巨人編】
厳かな式に血だらけの兵団服で駆け込んできたのは、アルミンだった。
転がるようにして入って来たアルミンは、真っ赤な絨毯をブーツで踏み叫んだ。
「鎧の巨人が…!!アニを取り戻すためにストヘス区へ急襲!!」
焦燥感に支配された声で叫ばれたそれは、血に染まった兵団服の理由を教えてくれた。
恐怖に慄く悲鳴が上がり、式に参列していた貴族や王族関係者が自分たちの身の安全のために騒ぎ出す。
そんな中、私は、真っ赤な絨毯を逆戻りするみたいにアルミンの元へ走った。
「どういうこと!?リヴァイ兵長達は…!?」
「お願いです…っ、助けてください…っ!!」
今にも泣きだしそうな悲壮な顔で懇願するアルミンを見れば、劣勢であることは明らかだった。
戦況は最悪なのだろう。
そう悟れば、血の気が引く前に、もっと強い感情が私を支配する。
仲間の元へ行くー。必ず、共に戦うー。
「もちろんよ!さぁ、行こー。」
「行かすわけないだろ。」
ルーカスが私の腕を掴む。
振り返れば、悪魔よりも冷たい瞳でルーカスが私を見下ろしていた。
「君はここで俺と結婚式を挙げる。巨人なんかに邪魔はさせない。」
「何言ってるの!?今、ストヘス区が襲われてるの!!
ここにだって巨人が来るかもしれないわ!!」
必死に手を振りほどこうとする私なんてものともせず、ルーカスは白髪の執事に、王都の兵力を集めて巨人の侵入を阻止するように指示を出した。
他の貴族たちも、なんとか王都を守るようにとあちこちで指示が飛んでいる。
まるで、王都さえ守られればそれでいいと言っているようなそれに、腹が立つどころか、もう感情すら湧いてこなかった。
彼らにとって、今このときも命を懸けて戦っている兵士の命なんてそこらへんに転がる石と変わらないのだろう。
いやきっと、兵士だけじゃない。
すぐ隣にいる誰かの命だって、無駄に肥えた自分の命に比べて、ひどく安く見積もっているに違いない。