【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第131章 ◇第百三十話◇深い愛は試されて、傷をつけて【女型の巨人】
それに、そういうことじゃないのだ。
私が傷ついたのは、リヴァイ兵長が浮気をしたと思ったからじゃない。
心変わりされたと思ったからじゃない。
それは悲しくて、苦しくて、息が出来ないくらいツラかった。
でも、傷ついたのは、そこじゃない。
私はー。
「言い返せなかったの…。」
「え?」
ダイが顔を上げて、私を見た。
でも、遠くをじっと見つめる私の目は、あの日、どんな理由があったにしろ、追いかけてはくれなかった恋人を必死に探していた。
「結婚してくれない男と一緒にいるのはツラいでしょう?って言われて、言い返せなかった…っ。
それでも一緒にいたいって、リヴァイ兵長がいればいいって…思ってるのに…っ。
私、言い返せなくて…っ、悔しい…っ、好きなのに…っ、誰よりっ、愛してるのに…っ。」
「…っ。」
ダイが私の腕を引いて、自分の身体に押しつけるように抱きしめる。
身長差のないリヴァイ兵長とは違って、私の顔はダイの胸元にあるから、心臓の音がよく聞こえた。
少し早めのその音は、私の愛おしい音とは違っていて、涙が止まらなかった。
好き。好きなのだ。リヴァイ兵長のことが大好きだ。
結婚なんてしなくていい。
そばにいてくれるなら、それでいい。
リヴァイ兵長が愛してくれたら、そんなに幸せなことはない。
それだけでいい、はずなのにー。
「…チッ。」
私とダイの死角、建物の角。
リヴァイ兵長が一緒に寒い夜を過ごそうと思ってくれたことも、全て聞かれていたことも、私は知らなくてー。
怒りに任せて壁を叩き、悔しそうに唇を噛んでいるリヴァイ兵長がいたなんて、私は知らなくてー。
「リヴァイ兵長…っ。」
ダイに縋りついて、抱きしめてはくれない恋人を思って惨めに泣いた。
世界で一番、リヴァイ兵長を愛していると信じていた。
誰よりも深い愛で、愛していると信じていた。
リヴァイ兵長を愛してるー、それが私の全てだったから、そのすべてが崩れ落ちていくのが、ひどく怖かったー。