【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第109章 ◇第百八話◇ただの悪い夢であれ【恋の行方編】
「ごめんなさい…っ、リヴァイ兵長…っ!
私がもっとちゃんと、行くなって言えば、こんなことには…っ。」
涙を流し、しがみつくように、リヴァイの腰に抱き着いてきたのは、見覚えのある女兵士だった。
ミケの分隊に所属し、まだ精鋭と呼べる実力はないということで当初は今回の壁外任務に参加する予定ではなかった調査兵だ。
どうしても経験値を積んで、もっともっと強くなりたいというジーニーと彼女の友人の熱意に根負けしたミケが、を彼女達の班の班長にすることで壁外任務の許可を出した。
同じ女兵士ということと、圧倒的なスピードで実力を身に着けたの技術をそばで見ることは、早く強くなりたいという彼女達のためになると判断したのだと、リヴァイはミケから直接聞いている。
「どういうことだ。」
「は、私達の前を走ってたんですけど…っ。
早くリヴァイ兵長に会いたいからって、隊列を乱して走り出しちゃって…っ!
私達も追いかけたんですけど、霧と雨ですぐに見えなくなっちゃってっ。」
「アイツが…?」
信じ難い話だった。
早く会いたいー、にそう思われている自信ならある。
でも、この霧と雨の中、壁外で隊列を乱すことがどれだけ危険な行為か分からないようなバカでもないはずだ。
しかも、自分を犠牲にしてまで他人を守ることばかり考えるが、自分が任された班員を残して、自分のために走るなんてそんなことするだろうか。
「もう一度、言ってもらえますか?」
真剣な顔で、アルミンは食い入るようにジーニーの顔を覗き込んだ。
リヴァイの腰に抱き着くジーニーの腕の力が強くなる。
「何よ、アンタ、信じてないわけ!?
何度だって言うわよ、はリヴァイ兵長に会いたいからって
班員の私達を残して、どこか行っちゃったのっ!!」
ジーニーが叫んだ声が、廊下に響く。
やっぱり、何度聞いても信じられないー。
でも、それを嘘だと言い切るだけの証拠もないし、ジーニーがそんな嘘を吐く必要があるとも思えない。
それなのにー。
「嘘ですね、それ。」
ハッキリと言い切ったアルミンは、そう確信しているようだった。