【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第89章 ◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド【恋の行方編】
リヴァイ兵長が何かを言おうとしたのに気づいて、私はそれよりも先に早口で喋り始める。
「私の恋は、ハッピーエンドですよ。
リヴァイ兵長が生きてくれてて、それだけで幸せなんです。」
嘘ではないから、私は幸せそうに微笑んだはずだ。
それなのに、リヴァイ兵長は悲しい表情を浮かべて、それを誤魔化すように私の頭を撫でた。
それがいつもよりも優しい気がして、胸がきゅっと締め付けられた。
けれど、心のほとんどを占めているのは嬉しい感情だった。
私の気持ちを知っていて、こうして受け入れてくれる。
優しいリヴァイ兵長は、思うこともあるのかもしれないけれど、私はそれだけで、幸せ以上を貰っている。
「で、白い女はどうなったんだ。」
「だから、白雪姫です。」
私は苦笑して、また続きを読み聞かせる。
リヴァイ兵長が私の肩を抱く。
私はリヴァイ兵長の頭に少しだけ寄り掛かってみた。
私の肩を抱いていたリヴァイ兵長の手が、私の頭に乗せられて、触れるだけだった頭をさらに引き寄せる。
そして、寄り掛かる私の髪を、リヴァイ兵長の指が悪戯に絡めては流して遊び出した。
それがくすぐったくて、心地良くてー。
「それから、白雪姫は、王子様と幸せに暮らしました。」
そっと、本を閉じる。
リヴァイ兵長には、恋の物語はつまらなかったようだ。
白雪姫が命を狙われている場面までは、私の髪で遊んでいた手はベッドの上に落ちて、耳元から寝息が聞こえていた。
起こさないように、ベッドから抜け出そうとした私の腰を、リヴァイ兵長の腕が強く抱き寄せる。
起きているのだろうか、と思って顔を覗き込んだけれど、意外と幼い寝顔があっただけだった。
無意識に引き寄せてしまっただけのようだが、腕を無理やり引き剥がしたら、起きてしまいそうだった。
それにー。
もう少し、私もこうしていたいー。
白雪姫のハッピーエンドは、王子様と想いを通じ合わせて結婚することだった。
でも、私のハッピーエンドは、両想いでも、結婚でもない。
ただただ、リヴァイ兵長が生きていることー。
私が望む幸せはそれだけだ。
それが叶うのならば、どんなに残酷な世界でも、どんなに惨めで苦しみに満ちた世界でも、愛する人が生きている世界なら、どんな生き様だって構わない。
それこそが、私のハッピーエンド。
リヴァイ兵長の頭にそっと自分の頭を乗せて、目を閉じた。
私は今、幸せだ。