【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第89章 ◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド【恋の行方編】
「しぶてぇな。」
白雪姫が倒れているところに帰ってきた小人が、彼女の腰を締め付ける腰紐を切って、息を吹き返したところまで読むと、リヴァイ兵長が呟いた。
この場面で、そんな感想が出てくるのはリヴァイ兵長くらいじゃないだろうか。
思わずクスリと笑うと、リヴァイ兵長の手が私の肩から離れた。
そしてー。
「部屋の外で何が起きてるか、お前は何も言わねぇんだな。」
「え?」
思わず、本に落ちていた視線を上げてリヴァイ兵長の顔を見た。
切れ長の瞳がすぐそこで、私の瞳が見てきたあの新聞記事を読もうとしているような気がして、慌てて目を反らす。
「訓練の話なんかしちゃって、
リヴァイ兵長がやりたいなんて言いだしたらいけませんからねっ。」
「…それは、言わねぇな。」
リヴァイ兵長は、私の手元から本を取り上げた。
適当にパラパラと本をめくりながら、口を開いて訊ねたのは、たぶん、ずっと、私に確かめたかったのだろうことだった。
私もずっと、その話には触れないようにしていたからー。
「あの豚野郎から、何か聞いたか。」
「モーリって男ですか?んー…、お兄さんがどうのとは言ってましたけど、
終始怒ってて要領を得ないのでよく分からなかったです。
金髪の男達も煩かったし。」
もし、リヴァイ兵長に訊ねられたらこう答えようーそう決めていた台詞だったから、私の口からは、驚くほどすんなりと嘘が吐き出された。
私の瞳をじっと見て、リヴァイ兵長は言葉の中の真実を探そうとしているようだった。
「…そうか。なら、いい。」
ようやく、リヴァイ兵長の切れ長の瞳が反らされて、私はホッとする。