【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第89章 ◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド【恋の行方編】
リヴァイ兵長が動けるようになるまで、そばにいて世話をしたいという私の願いを、ハンジさんは聞いてくれた。
だから、通常の任務に戻っている兵士達のそばで、私だけ、部屋で出来るような書類仕事を行っている。
特別扱いを快く思っていない兵士もいるだろうとは思うけれど、今は人の目よりも、ただリヴァイ兵長のそばにいたかった。
私にできる限りのお礼とお詫びを、させてほしかった。
今、リヴァイ兵長は、執務室兼自室に戻っている。
病室にはいたくないと希望したからだ。容態も落ち着いてきているし、とりあえず、急変はないだろうということで、医療兵からも許可が出た。
だが、ベッドから出ることを、医療兵だけではなくエルヴィン団長にも禁止されている。
きっと、身体のことだけではなく、リヴァイ兵長の心の為だろう。
今の冷たい世間の目から守らないといけない。
私も、部屋から出てあの胸糞悪い新聞記事を読んでほしくないと切に思う。
「それとさ、もうすぐお昼だろう?
ちゃんと薬を飲むように、から言ってくれないか?
子供みたいに、薬飲むの嫌がるからさ。」
ハンジさんは、心底困ったようにため息を吐いた。
傷が深かったせいか、まだ傷が原因の熱が下がっていない。
そのため、リヴァイ兵長には医療兵から薬がたくさん出されている。
でも、ハンジさんの言うように、薬がなくても自力で治せるとリヴァイ兵長は信じているようで、なかなか飲んでくれない。
たぶん、本当に自力で治せるのだろう。リヴァイ兵長なら。
でも、薬を飲んだ方が良いに決まっているのだ。
「それならバッチリです。
薬を飲まないと、紅茶も飲ませないと脅しておきました。」
私は、親指を立てて、ニッと笑った。
すると、一瞬、呆気にとられたようにポカンとしたハンジさんが、思い切り吹き出して笑い出した。
「そりゃあいいっ。そんな脅し文句が効くのは、リヴァイだけだよっ。アハハハっ。」
ハンジさんは本当に嬉しそうに笑った。
それから、今日の任務として任されていた書類を、さっきモブリットさんに提出したことを報告してから別れた。
私の背中が小さくなった頃、ハンジさんが、乱暴に破られた新聞紙をゴミ箱から取り出したことを、私は知らなかった。