【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第84章 ◇第八十三話◇愛しい騎士を悲劇から救って【恋の行方編】
モーリの指示で、側近の男達がリヴァイ兵長の腕を掴んだ。
「クソ野郎っ!!放しやがれっ!!」
低い声は力強くても、抵抗する力は悲しいくらいに弱く、左腕は骨が折れているのか動かないようだった。
私からリヴァイ兵長が離れて、漸く、私はどれだけの暴行をその身体に受けていたのかを思い知らされた。
凛々しかったタキシードは、濡れて泥水で汚れるどころか、蹴られた靴跡が砂汚れで白く残っていて、鉄パイプで殴られたせいなのか、ところどころ破れていた。
剥き出しになった肌は、赤黒いあざと傷を作って、赤い血を流している。
その血が、白かったはずのシャツを染めていた。
「よう、女。お前、殺してくれっつったか?」
モーリが、曲げた膝に両肘を乗せ屈みこみ、私の顔を覗き込んだ。
「もう…、許してください…。何でも、します…。
何をされても、いい。死んでも、いい。
だから…、リヴァイ兵長は、助けて…。その人を、誰からも、奪わないで…っ。」
私は両手を地面について、頭を下げた。
リヴァイ兵長が死んでしまうくらいなら、私が死んだ方がいい。
だって、彼は人類最強の兵士で、彼がこの世から消えるということは、人類の未来も消えるということだ。
それは絶対に避けなければならない。それが、私が今出来る精一杯の兵士としての務めだ。
それに、彼には帰りを待っている仲間がたくさんいる。尊敬されて、頼りにされて、調査兵団の兵士達にとってかけがえのない存在だ。
私なんかのために、消えてもいいような安い命ではない。
それにー。
「俺はリヴァイを殺すつもりだったんだが、
お前がそこまで言うなら、代わりに殺してやってもいいぜ?
自分の女が、自分のために死ぬってのも、それもまた良い演出の復讐だ。」
「死にます、だから、リヴァイ兵長は助けて、ください。」
「お前が死んだら、きっとお前の騎士様は悲しむぜ?それでもいいのか?」
「すぐ…、忘れるから、大丈夫。」
言いながら、私は唇を噛んだ。