【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第82章 ◇第八十一話◇目撃者【恋の行方編】
いつもはどちらかというとお茶らけていることの多い男だが、珍しく緊迫した表情をしている。
その後ろには、と一緒にいるのをよく見かける新兵が1人ついてきていた。
「よう、ネス。どうした。」
「それが、うちの班員が少し前に怪しいヤツを見たって教えてくれてな。」
ネスはそう言うと、ついてきた新兵の頭をポンと叩いた。
「104期新兵、アルミン・アルレルトです。」
緊張気味にアルミンが頭を下げた。
「アルミン、早速だが、怪しいヤツってのはどういうことだ?」
「はい、最初の爆弾騒ぎがあった雨の日の夜、
男の人と女の人が裏門でこっそり会っているのを見たんです。」
アルミンが真剣な顔で言った。
まっすぐな無垢な瞳に、ゲルガーは困ったように眉尻を下げた。
「あ~…、お前はまだガキだから分からねぇかもしれねぇがな。
裏門ってのは、男女がこーっそり会うのによく使われてー。」
「それが、俺もそう思ったんだけどよ、違ぇんだよ。」
ゲルガーの言葉を遮ったのはネスだった。
どういうことだと訊ねれば、またアルミンが口を開く。
「ひとりは兵団から支給されたレインコートを着ていたので兵士だと思います。
でも、雨の音が五月蠅くて、どっちが女の人か男の人かまでは分かりませんでした。」
「それで?」
「その兵団のレインコートを着ている方が、もう1人に何かを渡していたんです。」
「何かって、それは分からねぇのか?」
「僕にはー。」
兵団服に見えましたー。
自信なさそうなアルミンだったが、ゲルガーはそれは見間違いでも何でもないのだろう、と心のどこかで確信してしまった。
悔しさに拳を握りながら、ゲルガーはネスとアルミンを連れて、作戦会議室へと急いだ。