【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第78章 ◇第七十七話◇絵本の世界へようこそ【恋の行方編】
「リヴァイ兵長…っ。」
一気に不安に襲われた。
思わず名前を呼んでしまえば、リヴァイ兵長は握る手に力を込めた。
「大丈夫だ、心配するな。」
ただただ前を見て、振り返って顔を見てくれたわけじゃない。
でも、私の手を強く握って、逃がそうとしてくれているリヴァイ兵長のその声だけで、ほんの一瞬、ただそれだけで、私は大丈夫だと思えた。
それなのにー。
「あッ!!」
ドンッとぶつかってきた誰かの身体が、手を握り合う私とリヴァイ兵長の間に強引に割り込んできた。
離れるしかなかった手を、すぐに握り直そうとしたリヴァイ兵長の指が、一瞬だけ触れた気がした。
でも、人の波が私とリヴァイ兵長を引き離していく。
「リヴァイ兵長っ!!」
「っ!!」
名前を呼び合って、お互いの場所を確認し合う。
人の波の中にリヴァイ兵長を見つけた。目が合った。
まだ、手を伸ばせば届く距離にいた。
でも、その距離はどんどん離れていく。
近づこうとしているはずなのに、逃げ惑うたくさんの人達が、私がリヴァイ兵長の元へ行くことを許してくれない。
「掴まれっ!!」
リヴァイ兵長が叫んだ。
必死に手を伸ばした。
リヴァイ兵長が伸ばす手を掴もうとした。
でもー、無情にも届かないまま、人の波がリヴァイ兵長を消していくー。
それが私に、あの日、ルルに届かなかった手を思い出させた。
まるで、私は、たくさんの人の森で恐怖と孤独の濁流に飲み込まれていくようだった。