【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第77章 ◇第七十六話◇因縁のドレス【恋の行方編】
騙されたー。
そう気づいた時には、私は藍色のドレスを着るどころか、メイクも髪のセットも終えて、エルヴィン団長の執務室兼自室へやって来ていた。
エルヴィン団長が呼んでますーハンジさんの部屋にやってきたモブリットさんに、大切な話があるらしいからと言われたときに、何かおかしいと気づくべきだったのだろう。そして、逃げるべきだったのだ。
でも、友人の彼女へのサプライズのための身体測定だと信じて疑わなかった私は、何も考えずにエルヴィン団長のところへ来てしまってー。
「お願いだ、今日まで!今日までだから、パーティーに参加してくれっ。」
このとーりっ!とハンジさんが頭を下げて、両手を合わせた。
モブリットさんの説明によると、今朝になって、またあのシャイセの息子がドレスを着てパーティーに来いと言い出したらしい。
しかも、私の名ざし付きでー。
この前のパーティーで変な言いがかりをつけてきた息子の顔が思い浮かんで嫌な気分になる。
もう二度と会いたくなかった。
でも、そのパーティーに私がドレスで参加するだけで、壁外調査禁止令を出している貴族に取り合ってくれると言っているらしい。
そんなのー、断れるわけがない。
「分かりました…。」
「よかった~っ。ありがとうっ!!」
ハンジさんは私の両手を握って、飛び跳ねて喜んだ。
「ナナバさんは、まだ着替えないんですか?」
ハンジさんの後ろで、成り行きを見守っていたナナバさんに訊ねた。
外にはもう馬車が待っているという話なのに、まだ兵団服を着ている。
そろそろ着替えの準備は初めてもいいと思うのだがー。
「今日のエスコート役は私じゃないから。」
「え?じゃあ、誰ですか?モブリットさん?」
「僕はハンジさんのお世話で忙しいよ。」
「じゃあ…、ゲルガーさん?」
「アレは役に立たない。」
ナナバさんが手で振り払うような仕草をする。
では、誰だろうか。
他にエスコート役をする兵士の顔が思い浮かばなかった。
「そろそろ来るはずだ。」
エルヴィン団長がそう言って、すぐだった。