【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第72章 ◇第七十一話◇モノマネ【恋の行方編】
一瞬、錯覚しそうになった。
長い髪を後ろでひとつに結んでいて、買ったばかりの髪留めが太陽の光でキラキラ光る。
分かっている、アレはだ。
でも、そこにいるのはリヴァイなのではないかと思ってしまった自分が、ペトラは信じられなかった。
「ほぅ…。」
ピクシスが顎を指で擦る。
その隣でエルヴィンは、まるで自分のことのように誇らしげに口の端を上げている。
彼らの視線の先では、人類最強の兵士の技が繰り広げられている。
替刃が大きな木の幹の下から上に回転しながら嘘みたいな速さで飛び上がっていく。それをいつの間にか上で待ち構えていたが超硬質スチールで、叩き落した。
その途端、大きな木がいくつかに輪切りにされて崩れ落ちていく。
すると、巨人に模したハリボテに当たって倒れた。
そこをすかさず、が躍るようにうなじ部分を削いでいく。
そのすべてが、ほんの数秒の出来事ー。
さっきまでのモノマネでは、騒がしくヤジを飛ばしていた兵士達が、一様に息を呑み込んで、ただ立ちつくし、その圧倒的な強さを前に恐怖にも似た感情に襲われていた。
「嘘だろ…。」
オルオの額に冷や汗が流れている。
エルドとグンタも、自分の目を疑っているーそんな顔をしていた。自分も同じ顔をしている自信がペトラにもあった。
がリヴァイ班と一緒に訓練をしていたのは、この前の壁外調査前までだった。
その時はまだ、確かに腕はたつけれど、でもまだ粗はあった。
それこそ、モノマネの域を出ていなかった。
でも、今、彼女が見せたのは違う。
あれはモノマネじゃない。
そもそもモノマネでリヴァイの技を習得できるだけで普通ではないのに、その域を超えてくるなんてー。
だって、今のは、リヴァイだー。
筋肉の量と体力は違うだろうから、長期戦になれば圧倒的な力の差が出るはずだ。
でも、短期戦であれば、はリヴァイになれるー。
「…っ!」
近くの巨人のハリボテを全て倒したが地面に降りた。