【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第70章 ◇第六十九話◇彼女の王子様は誰?【恋の行方編】
空が夜に色づこうとしている頃、調査兵団の兵舎は騒がしくなり始めていた。
その中心人物がハンジだ。
あちこちを走り回っては、探し人の行方を訊ねていて、とうとう食事室から宿舎に戻ろうとしていたペトラの前にも現れた。
「あっ!ペトラ!!、見てないっ!?」
血相を変えて駆け寄ってきたハンジに、ペトラは驚きつつも、今日は朝から彼女のことは見ていないことを教えてやる。
ハンジはひどく焦っている様子で、ペトラにの居場所を聞きながらも、両目は忙しなく左右に動いていた。
「もしかして、まだ帰ってきてないんですか?」
「そうなんだよ。どこかに行くとかも聞いてない!?」
「昨日は、テュランの散歩に行きたいとは言ってましたけど…。」
「それはエルヴィンに禁止されたんだ。トロスト区から出たらダメだって。」
「もうそろそろ帰ってこないと心配ですね…。」
ペトラはチラリと空を見上げた。
そろそろ、夜空という名前で呼んでもよさそうな暗がりが訪れている。
最近は物騒だと聞くし、あまり遅くなると心配になるのは分かる。
それにしても、非番の兵士が1人まだ帰ってきていないだけで慌てすぎのような気もするがー。
確かに、心配ではある。
自分も一緒に探す、と伝え、手分けして探し始めようとしたとき、厩舎の方からナナバが走ってやってきた。
「まさか、と思って見に行ったんだけど…。
マズいよ、テュランもいない。」
ナナバは額に手を触れて、小さく頭を左右に振った。
「じゃあ、テュランと一緒にトロスト区の散歩じゃないですか?」
「誰とっ!?」
「え、1人で…?」
「ダメだよ、そんなのっ!もしが1人のところを見つかったら…っ。」
「やっぱり、本人に正直に忠告しておく方がよかったのかもな。」
慌てているハンジとマズいという顔をしているナナバは、誰に見つかるのを懸念しているのか。
そう訊ねようとしたとき、と食事室の方からアルミンとジャンが並んでやってきた。
それに気づいたハンジが、誰よりも早く彼らに駆け寄っていく。
その後ろをナナバとペトラも追いかけた。