【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第68章 ◇第六十七話◇シュトレンと恋心【恋の行方編】
以前来た時と変わらない店内には、紅茶の葉のいい匂いが漂っていた。
所狭しと並べられた瓶の中を覗き込んでは、さっきゲルガーさんがしていたように香りを嗅いで楽しむ。
さっきはつまらなそうにしていたリヴァイ兵長も、店内を歩き回っているようだった。
「リヴァイ兵長、これとかどうですか?
上品な包装だし、大きさもちょうどいいかなって。」
お菓子コーナーから早速良さそうなものを見つけた私は、小さな瓶を手に取って紅茶の銘柄と睨めっこしていたリヴァイ兵長に声をかけた。
持っていた瓶を棚に戻し、リヴァイ兵長が私の持っていたお菓子を手に取る。
「まぁ、いいんじゃねぇーのか。」
「よかった。それと、これもすごく美味しそうなんですっ。
予算よりもだいぶ安くなったし、お酒も値引きしてもらえたし、
お使い頑張った私達のご褒美にー。」
「要らねぇ。」
「…はい。」
バッサリと私の欲望だらけの提案は切り捨てられ、レジカウンターに向かったリヴァイ兵長の後ろをトボトボと歩く。
まぁ、自分用の紅茶の葉は買えるしいいかー、と私は両手に持った紅茶の葉の入った袋を見下ろす。
今度はいつ来れるか分からないので、少し多めに買っておくことにした。
「おー、リヴァイ。久しぶりじゃねぇか。
お?後ろにいるのは、いつぞやのべっぴんさんじゃねぇの。
だったか?元気にやってたか?」
店主が、リヴァイ兵長の後ろに隠れていた私に気が付いて声をかけてきた。
私のことを覚えてくれていたことが嬉しくて、思わず顔が綻ぶ。
「今日はデートかい?」
「任務だ。」
ニヤニヤとからかう店主に、リヴァイ兵長は最も適当な答えを口にする。
自然と出てきたそれに胸がチクリと痛んだけれど、これが私の望んだ『ただの上司と部下』だと考え直す。
「なんだよ、つまんねぇーな。」
「てめぇを面白がらせるために来てんじゃねぇんだよ。
仕事しろ、仕事を。」
「へいへい。」
途端に店主は面白くなさそうになって、適当にお菓子を袋に詰め込もうとし始める。
慌てて、それはお偉い方への土産物にするつもりなので、贈り物用の袋に入れてほしいとお願いする。
「あぁ…そういえば、部下もどきだったな。」
店主は、私の顔とリヴァイ兵長の顔を交互に見ながら言った。