【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第62章 ◇第六十一話◇閉じるしかなった心の扉【恋の行方編】
明日は午前中まで休みを貰っているというアニは、今夜は調査兵団兵舎の客人用の部屋に泊ることになっている。
夕食を終えた私は、アニを客人用の部屋に案内していた。
「荷物ってそれだけ?」
私は、アニが持っているバッグを指さして言った。
バッグというよりも手提げ袋のそれは、着替えくらいしか入らなそうだ。
「明日は帰ったら、そのまま任務だから。
兵団服しか持ってきてないよ。」
アニはそう言って、自分が持っているバッグを少し持ち上げた。
そういうことかと納得もしつつ、わざわざ休みを延ばしてまで泊まりに来てくれたアニに感謝する。
リヴァイ兵長のことや壁外任務のことで悩みが増えてばかりいた最近は、アニからの手紙も泊りに行くという言葉も嬉しくて嬉しくて仕方がなかったのだ。
でも、私がお礼を言っても、アニはどこか上の空だった。
「あ!さん!探してたんすよ!」
アニと歩いている私を見つけたジャンが駆け寄ってきた。
そんなジャンにアニは明らかに迷惑そうな顔をする。
「アンタさ、昼間も話しかけてきたけど、何なわけ。
もしかして、の犬?」
「はぁ?そんなわけねぇだろっ!昼間は憲兵に行ったはずのお前が
こんなとこにいるから、気になっただけじゃねぇーか。 」
「へぇ。それにしちゃ、を見つけたら嬉しそうな顔して
ご主人様の帰りを待ってた犬が尻尾振ってるようにしか見えなかったけどね。」
「そもそもなっ!お前はどうしてさんを呼び捨てなんだっ!
俺だって、さんづけだし、敬語なんだぞ!」
「それはアンタが、の犬だからでしょ。」
「うるせぇーな!違うっつーのっ!散れっ!散れっ!
俺に文句あんなら、俺が喋ってる間、どこかに散っておけっ!!」
顔を真っ赤にして本気で怒ってるジャンに、アニは涼しい顔をして言い返していて、対照的な2人が可笑しかった。
なにより、今日はどこか様子のおかしかったアニが、旧知の仲のジャンの前では気を許しているのが分かって、安心した。