【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第57章 ◇第五十六話◇不穏のはじまり(上)【恋の行方編】
「…へぇ~、そうなんですか~。
それで、そんな大切なドレスをどうして私が着てるんですか?」
恐る恐る訊ねてみた。
ほとんど諦めていたけれど、ただの試着だったという返事を期待した。
「こんな細っこいドレスを着れる女兵士なんかいるわけないだろ?!
みんな、細く見えるけどさ!筋肉とかいろいろあるんだよっ!
それに、なんで腰はそんなに細いのに、胸だけブカブカなんだよっ!」
おかしいだろッ!?と鬼気迫る顔でハンジさんが私の両肩を前後に揺さぶる。
あまりに激しくて息も出来ない私に、返事が出来るわけもない。
「いつもはエルヴィン団長とハンジ分隊長がパーティーに参加するんだけど
さすがに、ハンジ分隊長はドレスは着られないから
そのドレスが着られそうな女兵士を探していたんだよ。」
「…待ってください。もしかして、私に接待しろなんて言いませんよね?」
「悪い、!ドレスで来なかったら援助を打ち切るって言われてるんだっ。
資金不足は調査兵団の存続に関わるんだよ。分かるだろう?
この通りだっ!!」
モブリットさんが顔の前で両手を合わせて必死に懇願してくる。
その隣では、あのハンジさんまでも頭を下げている。
でもー。
脂ぎった豚野郎にいやらしい目で見られるのを想像して、寒気がした。
「嫌ですっ!絶対に嫌っ!ドレスじゃないとダメとかなんですか、それっ!
絶対にいやらしい目で見てきますよ!変態ですよ、変態!!
絶対に嫌ですっ!脱ぎますっ!私、今から脱ぎます!!」
「わーーっ!脱がない、脱がないっ!!
似合ってるからっ!お願いだからっ!ね?!ね?!」
「似合ってませんっ!こんなの着たこともないのにっ!」
それに、似合う、似合わないじゃないんですっ!」
「お願いだからぁぁぁぁぁああっ!!」
必死にドレスの肩紐をおろそうとする私と、どうにかして接待に行かせたいハンジさんとモブリットさんの攻防戦が始まった。
悪い顔をして出て行ったエルヴィン団長はまだ戻ってこない。
変態貴族に生贄を見つけたことを報告でもしているのだろうか。
悪魔だ、悪魔。
この人達は、悪魔だ。
必死に抵抗していると、悪魔の親玉、いやエルヴィン団長が部屋に戻ってきた。
そして、肩紐をおろそうとしている私を見て、フッと鼻で笑った。