【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第56章 ◇第五十五話◇もう二度と戻れない日常【恋の行方編】
リヴァイ班も訓練が休憩に入ったところのようで、リヴァイ兵長は、水道の水で顔を洗っていた。
その隣では、エルドとグンタが水道の水を出して頭を濡らしていて、オルオは、水道の出口を指で塞いで勢いよく噴射した水をエレンにかけて遊んでいる。
ペトラが呆れた顔でオルオに何か言っているが、くだらない悪戯はやめろとでも注意しているのだろう。
だが、馬鹿な男達は、そのまま4人で水道で水遊びを始めてしまった。
「あ…!」
オルオに仕返ししようとしたエレンが勢いよく噴射した水道水が、あらぬ方向へ飛んでしまって、リヴァイ兵長の顔を思いっきり濡らしてしまった。
慌てて謝るエレンと、嘘みたいな速さで逃げていくオルオ達。
その後ろから出遅れて逃げようとしたエレンは、リヴァイ兵長に首根っこを捕まえられて正座にさせられる。
頭から濡れて大変ご立腹のリヴァイ兵長に説教を受けているエレンを、少し離れたところにある巨人を模したハリボテの陰からペトラ達が覗いているのが、ここからはよく見えた。
「ふふ…っ。」
思わず笑ってしまった。
「何が面白いんだ。」
ミケ分隊長の声も聞こえないくらい、私はリヴァイ班の様子をじっと見ていた。
遠く離れた場所からなら許されるとでも思ってるみたいに、リヴァイ兵長の横顔を見つめていた。
(いいなぁ…、ペトラ達。)
怒られている彼女たちでさえ羨ましくて、また泣きそうになってくるから、私は唇を噛んで堪える。
ミケ分隊長の腕が私の背中から回って、大きな手が頭に添えられると、広い肩に乗せるように押された。
やっぱり、調査兵団の中でも特に身長も高くガッチリしているミケ分隊長の腕の中は、リヴァイ兵長のそれとは全然違う。
私はもう二度とあの温かい腕の中には戻れないのだと思うと、堪えきれなかった涙が流れだした。
「大丈夫、大丈夫だ。」
ミケ分隊長が言う。それが、ルルの言い方にそっくりで、私はミケ分隊長の肩で顔を隠して、泣いた。
あの日からずっと、私は泣いてばかりだ。
そろそろ、涙が枯れてもいい頃だと思うー。