【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】
何が起こっているのか分からなくて、リヴァイ兵長の瞳の中に必死に私の知っている色を探す。
でも、そんなものはどこにもなくて、ただ、リヴァイ兵長がヒドイ勘違いをしていることだけが、嫌というほどに理解出来ただけだった。
「本気で、言ってるんですか…?」
「こんな状況で、面白い冗談でも言ってやる男がいると思うのか、てめぇは。」
「思わないから…、だから…。」
「だから、なんだ。俺がアイツを呼んできてやろうか。
腰が抜けて立てなくなってなけりゃぁいいがな。
そうじゃねぇと、使いもんにならねぇだろ。」
嘲るように言うリヴァイ兵長が悲しくて、どうしたって気持ちが届かないことをこんなカタチで教えてくれるリヴァイ兵長が悔しくて、悲しくて、寂しくて、私は唇を噛んだ。
こぼれそうになる涙を必死に堪えて、声を上げそうになるのを必死に堪えて、全ては自分のせいだと、悪いのは私だとちゃんと認めてー。
それでも、自分勝手にジャンを利用することが出来た悪い女の私は、リヴァイ兵長を赦せなかった。
リヴァイ兵長の手によってベッドに縫い付けられた私の手を、抵抗するように押すのではなくて勢いよく引くと、想定外の行動に驚いたリヴァイ兵長の手が私から離れて、その身体が私の上に倒れてきそうになった。
ジャンよりも反射が早いリヴァイ兵長は、すぐに体勢を立て直して身体を起こそうとするから、それよりも先に、私がリヴァイ兵長の首に手を回して、その唇に自分の唇を押し付ける。
目を閉じる直前、驚いて見開くリヴァイ兵長の目が見えた。
私はジャンのことが好きなのだと思い込んでいるのだから、ひどく狼狽えているだろう。
でもいい。そんなのもう知らない。
だって、私が好きなのはリヴァイ兵長なのだからー。
リヴァイ兵長が離れていってしまわないように、首に回した両手に力を込めた。
そうしていると、リヴァイ兵長からも唇を押し付けられ始めた。
お互いの身体を抱きしめ合って、息が苦しくなっても、唇を求めあうことを止めなかった。