【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第54章 ◇第五十三話◇気づかれない思惑【恋の行方編】
厩舎で暇そうにしていたテュランは、林檎が見えた途端に目を輝かせた。
結局、最後まで重たい紙袋を抱えてくれていたリヴァイ兵長が餌箱に林檎を入れて、テュランに食べさせてくれている。
「悪かったな。」
テュランの口に林檎を持って行きながら、リヴァイ兵長が謝った。
だが、何に対しての謝罪なのか分からず、私は首を傾げる。
謝らなければいけないことなら多々思いつくのだが、謝られる理由には心当たりがなかった。
「何がですか?」
「さっきは、感情的になりすぎた。悪かった。」
私を見るリヴァイ兵長は、本当に申し訳ないと思っていそうだった。
確かに、さっきのリヴァイ兵長はいつもとは違う気がした。怖かった。
でも、だからって、彼が謝るようなことではない。
悪いのは私だから、もう一度、頭を下げた。
「いいえ、私の思慮が浅かったです。
今後は気を付けます。すみませんでした。」
「あぁ、そうだな。任務中の兵士を使うのは褒められたことじゃねぇ。」
「はい。」
その通り過ぎて、私は、情けなさで消え入りそうな声で返事をする。
リヴァイ兵長は、感情的に叱りつけたのも悪かったからもう気にしなくていいと言ってくれた。
それでも、なんとなく気まずい中、テュランだけが嬉しそうに林檎を食べ続けていた。
(…リヴァイ兵長、訓練に戻らなくていいのかな。)
私は、テュランに林檎をやるリヴァイ兵長を眺めながら思う。
重たい紙袋を持って運んでくれるだけだと思っていたから、本当は最初からずっと不思議に思っていた。
でも、なんとなくだけれど、訓練に戻らなくていいのかと聞いたら、また怒られる気がするのだ。
たぶん、今日のリヴァイ兵長は、好きにさせるのが一番だと思う。たぶん。
「お前は、あぁいうのが好きなのか。」
「あぁいうのって何ですか?」
テュランの口に林檎を運びながら、リヴァイ兵長に訊ねられたそれに、私はまた首を傾げた。
今日のリヴァイ兵長は、会ったときから不機嫌だし、急に主語もなく喋り出すし、いつもと様子が違う。
どうしたのだろうー。
「お前の代わりに紙袋を抱えてた、ベルなんとかって言ったか。
あの新兵だ。」
「あぁ、ベルトルトですね。
それは、もちろん好きですよ。優しくて、いい子だと思います。」
リヴァイ兵長が何を意図して聞いたのかは分からなかったけれど、私は質問に素直に答えた。