【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第53章 ◇第五十二話◇臆病者の夜【恋の行方編】
「冗談だ。」
大真面目な顔で、リヴァイ兵長が言う。
少し前にもそんな顔を見た気がする。
冗談と本気のときの顔の違いが分からな過ぎる。
「ビックリしました…。」
「悪ふざけが過ぎたな。悪かった。」
リヴァイ兵長はそう言いながら、私の腕を掴んで身体を起こしてくれた。
「大丈夫ですよ。私に男の人の怖さを教えようとしたんですよね。」
ニコリと微笑む私に、リヴァイ兵長はそういう意図だったことを認めた。
だから私も、ものわかりのいい部下のフリをする。
「リヴァイ兵長が本気でそんなことしないって信じてますから。」
「そりゃ、ありがてぇな。」
リヴァイ兵長はそう言って立ち上がると、脱衣室に向かった。そして、ルームウェアのシャツを羽織って戻ってくる。
本当は、あのまま最後までいっても構わなかったー、そう言ったらリヴァイ兵長は困った顔をするのだろうか。部屋を出て行ってしまうのだろうか。
冗談だと本気で言われてしまって、安心するよりも傷ついてしまった心を必死に隠して、私は笑顔を作った。