【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第51章 ◇第五十話◇世界一幸せな部下【恋の行方編】
「そういえば、お前は調査兵団に入団してなかったら
結婚してるはずだったんだな。」
少ししてから、相変わらず私の後ろを歩いていたリヴァイ兵長が口を開いた。
変えられた話題は、私の胸をチクリと刺した。
やっぱり、リヴァイ兵長は私に心は見せてくれない。当然すぎるそれに傷つくなんて愚かすぎる。
「そうですね。ストヘス区で貴族のお嫁さんだったのが、
今は兵士になって巨人と戦ってるんですから、
人生って面白いですよね。」
後ろに回した両手を握って、私は自分の足を眺めながら歩く。
一歩、一歩、前に進んでいく私の足。
逃げたり、走ったり、立ち止まったり、いろんなことがあった。
でも、一度だって、後ろを振り向かなかったことだけは褒めてもいいかもしれない。
だって、私は、ルルのことがあったあのときでさえも、調査兵団に入団したことだけは絶対にー。
「お前の男は、貴族界でも特に力を持っている一族の出だ。
誰に聞いても評判が良いせいで、兵団の情報収集能力をもってしても弱みひとつ握れなかった。
すぐには無理だったにしても、家族をストヘス区へ移住させるくらい出来たはずだ。それにー。」
「どうしたんですか、急に。」
リヴァイ兵長から出てくるルーカスの話を、もう聞いていたくなかった。
後ろを振り向かず、私は笑い声で言った。
私が唇を噛んでいることなんて知らないリヴァイ兵長には、私がとても楽しそうにしているように見えているはずだ。
好きな人に、自分の昔の恋人のことをそんな風に言われて、とても傷ついているなんて思いもしていないのだろうな。
「後悔してないのか。」
「私、今、世界一幸せですよ。」
後ろを振り向いて、私は笑った。
強がりだった。
でも、私は本物の世界一幸せな女にはなれないから、せめてー。
「ただの人類最強の兵士のリヴァイ兵長の部下になれて、
私は今、世界一幸せです。」
「不憫な女だな。」
リヴァイ兵長の薄い唇が、ほんのわずかに微笑を作っているように見えた。
それはもう、さっきの自分を蔑むような感じではなくて、私も嬉しくて笑顔になった。
世界一ではないけれど、好きな人と一緒にいられるのだから、私は幸せなのだ。