【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第165章 ◇第百六十四話◇嗚咽【運命の決戦編】
ハンジは、の両親から、リヴァイへのお願いを言付かっていた。
兵舎にまでやって来た彼らに、会っていけばいいとは伝えたのだけれど、自分達に会うのはつらいだろうからーと伝言だけ伝えて帰っていった。
リヴァイの部屋に向かう途中、何人もの調査兵達とすれ違った。
ウォール・マリア奪還作戦成功の一報は、号外として世界中にばら撒かれ、今、あちこちで歓喜の声が上がっている。
でも、その喜びの勝利をもたらした調査兵団の兵舎の中は今、悲しみに暮れていた。
壁の中で不自由に生きていた人類が、自由を夢見始めようとしている。
本当にすごいことなのに、ハンジ達はまだ、それを喜べずにいる。
だって、この世から、最も優しい兵士が消えてしまったからー。
その兵士が、この世界の勝利をもたらしてくれたのにー。
いつか、は言っていたっけ。
誰も死なせない兵士は死んだーと。
でも、は多くの兵士の命を救った。そして、人類に未来をくれた。
兵士になると決めたあの日から、だけはずっと変わらなかったー。
いつだって誰よりも兵士らしくなくて、優し過ぎて、でも、誰よりも強かった。
もしかして、今日の日のために、神様はが調査兵団に入団するように仕向けたのだろうか。
もしもそうなら、それは人類にとってとても有難いことで、そして、を愛する者たちにとってそれはあまりにも残酷でー。
リヴァイの執務室兼自室の扉の前で、ハンジは一度大きく深呼吸をした。
ノックをしてみるが、返事はない。
この部屋には、の想い出がありすぎることをハンジだけではなく、調査兵のみんなが知っている。
リヴァイのことが心配になって、ハンジはそっと扉を開けた。
灯りのついていない執務室は暗かった。
寝室にいるのだろうか。
そっと扉を閉めて、ハンジは中に入る。
ソファの上に脱ぎ捨てられている兵団ジャケットに気づき、リヴァイらしくないそれにとても胸が締め付けられた。
赤黒く染まった血、それがのものだなんて、今でもまだ信じたくない。
後ろから肩を叩かれて、ドッキリですよ、なんて無邪気な笑顔で驚かせてくれるような気がするのだ。
でも、振り返ってみても、そこに会いたい笑顔はない。