ここは私達の世界です【HUNTER×HUNTER】続番外編
第16章 星降る夜の私達
力強い彼の腕に引き寄せられて背後から包む様にぎゅっと抱き締められたのだ
「……………っ」
本当に一瞬の出来事に驚きと戸惑い、そして鼓動が早まって言葉を詰まらせた私の耳元にポツリと落とされた囁き
「風避けくらいにはなるだろ。」
私のお腹の前にぎゅっと繋がれた手は私をすっぽり脚の間に閉じ込めて
私の肩に顎を乗せた彼は「風邪でも引かれたら困る。」なんて続けた
途端に外界から隔離されたみたいに周囲の音が消えて彼の腕から望む満天の星空
優しい彼のぶっきらぼうな声だけが私の鼓膜を揺らして
その温かな体温は心底幸せを実感させ、星空への感動も相まって私の涙腺を緩めた
「沙夜子。」
「……はい」
大好きな人に名を呼ばれ緩く顔を向けた時には
宇宙より黒いその瞳が間近に私を捉えて甘く唇をふさいで
「これで防寒完了。」
なんて余裕たっぷりに微笑まれてしまえば私はいよいよ死を覚悟する程脈を上げていた
「そう言えば沙夜子が好きそうな星座が見えてるよ、こぎつね座って言うんだけど」
……………風に吹かれて頬が熱い
ちゃぶ台のしっくり来るあの部屋で私の贈った図鑑を興味深気に捲っていた彼の姿を思い出す
彼は直ぐに星の事を暗記してしまった
「あっちは魚座、ギリシャ神話の愛と美の女神アフロディーテが……」
彼の落ち着いた声色が紡ぐ星座の話が心地好く胸に響いて溶けて行く
あの日々の中で恋焦がれた彼と私は結ばれたのだ
それがどれだけ幸せな事か
私は何度も何度も強く噛み締める
「イルミさん私今すっごい幸せです」
「あっそ。」
やはり彼は素っ気ない
………………だけど、
大好きな腕は同じ気持ちだと答える様にぎゅっと私を抱き締めた