第6章 大人になる方法/イルミ/+アルファ夢主初体験裏
ただ単純に、無性にイルミとくっつきたくなり 両腕をぎこちなくイルミへ伸ばした。
「……イルにい」
「なに?」
動作で意図は通じたようで 身体を近付けてくるイルミの背中へ手を回した。自らイルミに抱き着けば 濡れた目尻に優しいキスが落とされる。身を覆う体温が心地良い。
呂律の崩れそうな声で告げた。
「いま………すごく きもちよかった」
「それは良かったね。そういうの イクっていうの。気に入った?セックス」
「イル兄と、するのは。でもこんなこと 他の人とはできない……」
「素直だねユイは」
「………イル兄 好き」
そっと頭を撫でられた。
言葉での返答はなくとも優しいその所作は イルミなりの気持ちの表れなのだろうか。
元より最初にはっきり言われている。告白をもらった所で気持ちなんかブレないし 言われたくもなかったと。別に何かを期待している訳ではない。
「イル兄……、」
返答出来ない重たい気持ちを知りながら願いを聞いてくれたイルミにむしろ感謝をしなければならない。その筈なのに、自分で言いたくて勝手に好きだと言っただけなのに、急に悲しくなってくる。
イくという感覚のせいなのか 感情が高ぶって仕方なかった。
「好きなの……、っ」
制御不能な想いを抱いたのはいつからなのだろう。好きで好きでどうしようもない。
頭を撫でる手も、胸元を這う黒髪も、名前を呼ぶ声も、ほんの些細な仕草でさえも。
「だいすきなの…っ…」
愛おしそうに、長い指がユイの頬を辿り 小さな顔を優しく撫でる。細く開けられたイルミの唇が 静かに答えを語りだす。
「何を言えばいい?」
「…え…」
「言葉でならいくらでも言える。ユイのこと 好きでも愛してるでも」
「………」
「でもユイが欲しいのはそれじゃないよね」
腫れそうな瞼に唇が触れた。大事にされればされるだけ ひどく虚しくなってしまう。
「ホントは泣かせないまま終わらせたかったんだけど」