第14章 愛逢月の秘蜜ーその後の秘密ー * 政宗、家康
「美依、おいこら待て」
「〜〜〜………っ!」
「無視するな、待てって言ってるだろ!」
俺を丸無視して城の廊下を走って行く美依を後ろから追いかける。
普段は歩くのすらゆっくりなのに、今はどれだけ速いんだよ。
三人での行為があった昨夜。
美依が起きたら時間差で部屋を出ようと言った家康が、先に美依の部屋から出ていき……
俺も美依が着替えるのを待ち、部屋を出たのだけれど。
それから、美依は顔を合わせればこの調子。
俺の姿を見れば逃げるし、多分家康にも同じ事をしてると思われる。
………気持ちが解らなくもないが、そう避けられるのは案外堪える。
だから、追いかけることに決めた。
意地でも話をつけてやる、美依にはっきり気持ちを言うと決めたんだからな。
「二人とも廊下を走るな!」
「うるせぇ、構ってる暇はない!」
「おいこら、政宗、美依……!」
途中すれ違った秀吉をすり抜け、それでもまだ追いかける。
この先は天主だ、さすがにそこに逃げれちゃそれ以上は追いかけられない。
(このままじゃ、埒が明かねぇ)
これ以上逃げられてたまるか。
俺はさらに駆け足になり、無理やり美依に追いつくと、その肩をぐいっと引いた。
「きゃっ……!」
美依が小さく声を上げる。
俺はそのまま美依の体をすぐ横の壁へと押し付けた。
壁に手をつき体を囲って、美依の退路を塞ぐ。
二人して息を切らせ…俺は美依の若干紅潮した顔を見つめながら、不機嫌に言葉を発した。
「なんで逃げるんだよ」
「だ、だって……」
「恥ずかしいんだろ、知ってる」
「なら、追いかけて来ないで!」
(いくらお前の頼みでもそれは聞けねぇ)
媚薬に冒され、二人がかりで癒してもらったなんて、美依にとっては恥ずかしい以外の何者でもないのだろう。
だが…よくよく考えてみれば『その前』から美依とはまともに話していない。
そう、美依が酔っ払って、俺が抱いたあの日以来だ。
俺は真っ直ぐに美依の瞳を見つめる。
さすれば、美依も俺を見つめてきて、少しだけ息を飲んだ。