第1章 さよならの代わりに
彼女が亡くなったと知った後も、いつものように任務こなしてきた。
未だ壁外にいる以上、気が抜けないからだ。
それでも、リリーが死んだという現実は、俺の心に大きな穴を開けた。
リリーの存在は、俺にとって大きな存在だった。
それはいつからかは、わからない。
だが、気づいた頃には大分惚れていた。
調査兵という、いつ死ぬかわからない状況では、相手の重荷になるのを恐れて気持ちを伝えない兵士も多い。
人類最強の兵士などといわれているが、あいつより先に死なないなどという保証はない。
そして、俺は沢山の仲間の犠牲の上にいる。
自分だけが、幸せになるなんて…そんな資格はない。
いや、それもあるが本当は怖かっただけなのだ。
リリーに気持ちを伝え、恋仲になったら、自分のなかのこの気持ちは確実に大きくなる。
そんな中で、リリーが死んだら自分はどうなるのか。
その屍を乗り越えて、いけるのか。
ただ、それが怖かっただけだ。