第12章 エピローグ.Reliance
幸福感が胸にあたたかく広がる。
凛の唇が汐の唇に重なった。
ふわりとやわらかく溶けた。
自分の唇の上で溶ける凛の唇を味わい、キスとはこんなに気持ちがいいものなのだと知った。
凛とのキスは、今まで汐が経験してきたキスでは決して知ることのなかった甘さと幸福感と快感をはらんでいた。
やがて唇が離れて、2人の間には余韻と言う名の静寂が流れた。
大きく脈打つ心臓の音が相手に聞こえてしまいそうだ。
「ねぇ、凛くん...」
甘くとろけた声で呼ぶ。
吐息のかかる距離に凛の顔がある。
思わず熱っぽい息が漏れた。
「もういっかい...して?」
凛と汐、2人が出会って4ヶ月が経った。
きっかけは携帯電話だった。
携帯電話が運んだものは、心の居場所だった。
窓から吹き込む夏の終わりの風がカーテンを靡かせる。
残暑はまだまだ厳しいがもうすぐ秋がやってくる。
木の葉が落ちるのを待って冬がやってくる。
そうしてまた汐と出会った季節である春が巡ってくる。
汐と一緒だと、これからの季節はどういった風に見えるだろうか。
これから過ごす汐との時間に想いを巡らせながら、凛はもう一度汐の唇にキスをした。