第3章 LAUGH & PAIN
あれから半月ほど過ぎたが、やはり色々な人間共と明るく笑顔で接する瑠璃月を見ていると、苛立ちと欲望が抑え切れなくなる。
瑠璃月が愛おしいからこそ、あの輝くような笑顔を、羞恥と屈辱にまみれさせてやりたくなるのだ。
「今日も楽しそうでしたね、瑠璃月さん。」
「はっ?今、何て…!?」
「瑠璃月さん…」
「いきなりさん付けとか意味分かんないし!!それに何よその言い方!?」
部屋に戻った途端に、ネウロから今まで一度もされた事の無い呼び方と口調で話しかけられ、瑠璃月の背筋に冷たいものが走った。
一体何を企んでいるのか?
これはもう、嫌な予感しかしない。
瑠璃月は戸惑いの中に絶望の表情を浮かべながら後ずさる。
「逃がしませんよ。瑠璃月さん。」
ネウロに両肩を強く掴まれ、身動きが取れない。
「やめて!どういうつもり!?」
口調こそ穏やかで、唇には微笑すら浮かべているが、眼光だけは研ぎ澄ました刃の如く鋭かった。
「悪いのは貴女です。瑠璃月さん。」
「はぁ!?何で私が…っ!」
反論しようとした瑠璃月の唇は、ネウロのそれで塞がれてしまった。
長い舌が侵入して来て、瑠璃月の舌と無理矢理に絡ませる。
もうそれだけで、瑠璃月の身体の奥底が僅かに疼き始めた。
不本意にもかかわらず、すぐに感じてしまうこの身体が憎くて堪らない。
「んっ、ふ…っはぁ…何なの一体!?」
「少しは考えたらどうですか?僕がいつも、どれだけ苦しい思いをしているか…」
瑠璃月はますます混乱した。
その間にも、ネウロの手は瑠璃月の腰に回され強く抱き締められる。
「誰とでも楽しそうに笑う貴女は…やっぱり見ていてつらいんです。」
瑠璃月の脳裏に、あの夜の悪夢が蘇る。
どうにか振り解こうと、瑠璃月は必死にもがいた。
「それなら前にも言ったじゃん!!私は皆と仲良くしたいだけだし、ネウロと他の皆とじゃ好きの意味が違うって事も!ずっとネウロと一緒にいるって事も!!」
「なら尚更、この責任は取ってもらいます。」
「そんな…酷い!!」
抵抗する間もなくリビングのラグマットに組み敷かれてしまった。
普段とは違った、床の冷たさも伝わる堅い感触に身体は強張り、心がざわつく。