第128章 強くなれる理由<参>
汐の音のない歌が響いた瞬間、今までたっていた鬼が突然木にめり込むようにして倒れこんだ。
突然の事に何が怒ったか分からない鬼は、驚愕の表情を張り付けたまま木に顔を押し付けられていた。
(な・・・、なんだ・・・、これは・・・!?何故、何故立てん・・・!?)
「そのまま寝てろ!」
鬼が倒れたせいか重圧から解放された汐は、メキメキと音を立てている鬼に向かって鋭く言い放った。
炭治郎はその様子を、呆然とした表情で見つめていた。が、
「うわあああああああ!!!」
汐が鬼を押しつぶしたと認識した瞬間、炭治郎は先程とは全く反対の意味の悲鳴を上げた。
何とか這い出した禰豆子と玄弥も、目の前の光景が信じられずに目を点にさせていた。
その時、炭治郎は悟り、そして固く固く誓った。
(絶対に、絶対に!二度と、二度と!!汐を理不尽に怒らせたり、滅多なことを言うのはやめよう!粉砕される!跡形もなく!!)
背中に流れる冷たい汗が、今この時が現実であることを否が応でも伝えていた。