第2章 王子
労働者の男は指輪とルシエトを交互に見て困惑している。
「持っておくなり、売るなり捨てるなり、
お前の好きにしろ」
冗談めかして言うと、爽やかに笑って立ち上がった。
その日のうちに、ルシエトは父王の下に
進言に行き、労働者の現状と労働環境の改善を迫った。
痩せ細った労働者の男の為ではない。
このエジプトをもっと繁栄させ、強固にする為だ。
支配する者は支配される者をより良く支配しなければならないとルシエトは常々 考えていたからだ。
若輩ではあるが、人の上に立つ素質と
人を見る目は人一倍。
だから、ルシエトには、王宮は危険極まりない場所にも変わり無かった。