第4章 Cry in the cathedral
「防ぐだけではないぞ、ラクサス!!」
一進一退の攻防を繰り広げる2人。その様子をノエルは固唾を飲んで見守る。
「やるじゃねえか」
「同じ属性の魔法同士がぶつかるとなると、その優劣を決定づけるのは」
「魔力の高さ、そして技術と経験。だろ?」
ラクサスの応えに苦虫を嚙み潰したような表情でエルザはラクサスを睨む。
「そして心だ。貴様もマスターから学んだはずだろ」
「…学んださ。大事なのは力だ、ってことをな」
そう言ったラクサスの顔には世界を恨んでいるというような皮肉な笑顔が浮かんでいてノエルは苦しくなり目を逸らした。
「貴様というやつは!!」
その表情をさせてしまう原因の一つだと分かっているノエルにはエルザの言葉が胸に突き刺さる。
「…エルザ。ごめんなさい。私はここに居られない」
「ノエル?」
「神鳴殿は私が何とかするから、後はお願いできる?」
「ああ…」
「お願いねエルザ、ナツ」
「…っつ!!」
意志の固まったノエルの表情に圧倒されエルザは頷く。走り出すノエルの背中を3人は見つめる。その姿が小さくなった頃、やっと声が絞り出せたというように小さな声でラクサスは呟いた。
「…無駄だ。1つ壊すだけでも生死にかかわる。今この空には無数のラクリマが浮いているんだぞ。時間ももう無い」
「ラクサス。いいのか?ノエルをあのまま行かせて」
そのエルザの問いにラクサスは応えない。代わりに拳に雷を纏わせて2人へと放たれたが2人はそれを難なく防いだ。雷撃にはいつも感じるラクサスの気迫は乗っていなかった。
「ラクサスを止めてラクリマを壊すぞナツ!!」
「ああ!!」
ここマグノリアに居る全ての人の為にも、この雷竜を止めるのだと2人は剣と拳を構えた。