第1章 なんか目が笑ってないけど
彼と初めて出逢ったのは
そろそろ街のイルミネーションが
彩り始める寒い冬。
友達の誘いで
渋々参加したご飯会(というなの合コン)、
今は飲み会、とも言わないらしい。
ガッツいているとかなんとかの理由で。
もはや「ご飯会」、
だなんて言ってる女子はしたたかで、
自分たちの発する「単なるご飯会」に
一世一代の生き合いを入れてやって来る。
オシャレなイタリアンバル、
少しカジュアルに、なんて
ここにも計算が見えて。
お酒も進み、席替えも交え
「ご飯会」も盛り上がってきた頃に
遅れて登場した彼。
「わりい、遅れた」
濃いグレーに
薄いストライプが入ったマフラーを巻き、
黒のロングコートを羽織った
清潔感のある男性、
年齢は、同じくらいだろうか。
「おせえよ、翔!」
と私の隣に座る男性が声を発した。
「だからごめんって、」
と眉を下げて荷物を下ろす彼と
視線がぶつかる。
初対面の私に
ふ、っと笑い、会釈をする。
その表情だけで
わたくし軽くイキそうです。
(※乙女のための妄想恋愛小説)