第2章 武装探偵社にようこそ
蛇の襲撃事件から数日後………
「何故お前が居るのだ!!」
探偵社のオフィスに国木田の怒声が今日も元気に走っている。
視線の先には太宰と悪塗がとりとめもなく話していた。あの日、悪塗が探偵社に乗り込んで来てから、いくらか此処を訪れていた。
「佳いじゃないか国木田君。全く、美人が居る空間とは佳いものだよ」
「太宰、お前は仕事をしろ」
此れもまたいつもの掛け合い。探偵社員は慣れた光景の中、横で悪塗がふっ、と笑い出す。
「いやぁ、お前らと居ると楽しくなりそうだと思ってな。…なかなかに佳いじゃないか。飽きが来なさそうだ」
止める気の無い発言に頭を抱えるのが一人。
そんな中、太宰は「んーっ」と考え事をしている様だった。
「そうだ。此れから私、仕事の為に外にへ出るのだけど…佳かったら悪塗ちゃん。一緒に来ないかい?探偵社の仕事を見せてあげよう」
太宰の奇抜な提案に敦と国木田は「え"」と困惑の声を上げる。
「なら、治と行こう。…邪魔はしない心算だ」
悪塗は案の定提案に乗った。
椅子として座っていた異能蛇はいつの間にか消えていて、先にドアの近くに立っていた太宰のもとへ駆けていく。二人はドアを潜り、太宰の「いってきま〜す」の声と共に向こうに行ってしまった。
……頃合いを見計らって、オフィスで仕事をしていた調査員の面々は探偵社から出ていった。
実は此の件、事件解決が今回の本来の目的ではない。其れも数日前に太宰が云い出した……「彼女を探偵社に引き入れたい」という事によるものだった。
#NAME1 #が異能をどのように使うのか、探偵社に相応しい人材かどうかを見極める為の謂わば、敦を始めとする他の調査員達も受けた『秘密の入社試験』をすることが実の目的だった。
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「…それで、具体的には何をするんだ?」
「此の資料にある通り、調査さ。聞き込みをして、資料以上の情報を獲得する。…それが目的」
二人はヨコハマの街中を歩き乍ら話している。……物理的距離はかなり近い。
少し経って、太宰は街征く人々に聞き込みを始める。訊く相手を考えて声を掛けているのか、すぐに終わってしまったようだ。
「此れくらいで十分かな。#NAME1 #ちゃん、探偵社に戻ろう?」
悪塗が佳いのか、と確認すると太宰は微笑んで頷いた。