第19章 ☆Story36☆ 分岐点
ゆりの言葉に、何も返せない……
ゆりは本当に、そう思っているのかよ……
俺の存在が、重荷になっているって……でも、
確かに俺はゆりと出会っていなければただの高校生だ。
芸能人の友達はおろか彼女だなんて縁のない話だ。
ゆりは前に、こんな事を言ったことがある……。
『普通の女の子だったら普通のデートが出来る。』
ゆり達にとっての普通は俺らが知っている普通とは違う、
逆に俺らにとっての普通はゆり達にとっては普通じゃない。
価値観のずれも出やすいと思うしゆりが言ってたように
簡単に会えない相手……俺も周りに隠すことは大変だが、
ゆりのほうが何倍も大変なはずだ。ファンの人達にも
気を使ってそれだけでもかなり疲れると思う……。
だから、ゆりが重荷に感じていると言うのは
事実かもしれない……いや、事実なんだ……。
俺が、ゆりを苦しめてしまっていたんだ……。
「っゆり、俺は……俺はお前にとって邪魔なのか……?」
『っ……うん、居ないほうがいい。
だからもう……彼女としての私のことは忘れて?
私は、みんなのDolceの藤ヶ谷ゆりに戻るから……
私に彼氏はいない。この先これからずっと……誰ともね……』
「っ……」
忘れるって……簡単に言うなよ……
お前は忘れるかもしれないけど、俺は……
『ばいばい憲吾……私が、
最初で最後に本当に大好きだった人……』
「っゆり!まt‥_プツン…っゆり……」
ゆりは最後にそれだけを言い残し電話を切ってしまった。
スマホを持っていた左手を無気力におろす憲吾、
まだゆりの言葉に理解が追いつかなかった……。
「っゆり……何でだよ……」
俺らはもう、このまま終わってしまうのか……?
あれから一度も会わず
たった一本の電話だけで終わってしまうだなんて……
ゆりに、会いたい。
直接会って、一度だけでいいからちゃんと話がしたい。
きっとゆりは、俺が連絡をしても何も返してこないと思う。
もしかしたら、もうブロックもしているかもしれない……なら、
「俺が直接、行かないとだよな……。」