第15章 ☆Story33☆　決着

ピアノで伴奏から入りMiss Youを歌うゆり。
その歌声はとても綺麗で会場全体もその歌声に聴き入っていた。


『あなたに　あなたに……伝えたい言葉があるの
最後までずっと　言えずにいた……』
（みんな、私を見てる……みんな私に夢中……
その期待の眼差しに、応えてあげるからね？
それくらいはしてあげないとトップアイドルの顔が成り立たない……）



「っ凄い……」
（安定したメロディー、声の震えもない……完璧な歌声……）

「綺麗な声だね……でも、
これはゆりが "あの人" に向けて歌った曲でしょ？
ゆりが初めて披露した時、その想いが心の奥まで伝わってきた。
でも、あの子からはそういうのは感じられない。
ただ歌っているだけ、自分を魅せることしか考えてないよ……」


ゆりもニセゆりの歌声に聴き入り固唾を飲んだが
隣にいる来海は少し眉間に皺を寄せていた。

そして最後まで歌い終わり椅子から立ち上がるとお辞儀をした。
お辞儀をし顔をあげると再び満面の笑みを見せた。


『みんな！聞いてくれてありがとう！
私！みんなこと大好き！愛してるよー！！』


「「「うおおおおっ！！！」」」


『ふふふ♪』
（やっぱり、私が一番……みんな私の虜になってる！！）


会場は来海の時以上に歓喜で湧き上がった。
ニセゆりは満足そうにその景色を見上げていた。
そして拍手が治まると
ニセゆりはゆり達のところに戻ってくる。


「っ……」

『ふふ……ね？見たでしょ？
みんなが私の虜になったところ……もうアンタに勝ち目はないよ？
これ以上みんなを魅了することがアンタにできるの？』

「っ！」

「「っ……」」


ニセゆりはカメラに拾われないような小さい声で
ゆりの耳元で囁いた。
来海たち他のメンバーもその声は聞こえていたので
唇を噛み締めながらニセゆりの方を見た。

そして出番はいよいよゆり、ゆりは深呼吸をした。


「っ……ふぅ……」
（私は、"憲吾の為だけ" にこの曲を歌う……）

「ゆり！いつも通りに決めちゃえ！」

「「ゆり！」」

「「ゆりちゃん！」」

「「行ってこいっ！！！」」


「っ……みんな、ありがとう！」