第3章 ☆Story21☆ 動くそれぞれの歯車
「ユウ……今なんかユウの大声聞こえたんだけど、気のせい?
なんか、『父さん』とかって、聞こえたような……」
_ブチッ『っ僕、何も言ってないよ?
ゆりちゃんの気のせいじゃない?笑』
ユウはコンタクトを無理やり切りゆりの方に顔を向けた。
「そう?」
ゆりはあっさり納得すると髪を乾かしに再び戻っていった。
『っ……ゆりちゃん、もしかしてシャワーだけだったのかな……』
(普通に入るなら、もっと遅いから……)
百合side
太輔はまだ仕事から帰ってきてなくて、私はソファーに寝転びながら
ゆりが乗っているアイドル雑誌を見ていた。
『やっぱりゆりは写真映えもするねぇ♪
でも、ゆりはアイドルしてる時が一番輝いているかなぁ♪』
ごろごろしていると突然きょうすけからコンタクトが入った。
『っ!?』
(くつろいでいる時に来るとびっくりするなぁ……汗)
百合はビックリしつつきょうすけのコンタクトに応える。
『っきょうすけ……今度はどうしたの?
太輔はまだ仕事から帰ってきてないからいいけど……』
私たちは極力コンタクトを取らないようにしないといけないのに……
太輔はまだ帰ってきてないのが不幸中の幸い……
【……ゆりちゃんの、ことなんだけど……】
『っゆりがどうしたの!?』
きょうすけの深刻そうな声とゆりの名前に反応する百合、
(っゆりに何か……)
【ゆりちゃんね?明日憲吾くんの応援に行くんだ……】
『っそんなこと……?
いいじゃない!彼氏の試合を応援だなんて♪まさに青春って感じ♪』
まさかきょうすけは
こんなことを伝えるためにわざわざコンタクトを……?
『それは、全然いいんだけどさ……』
【……きょうすけ、何があったの?】
でも、きょうすけが伝えたいのはこのことではないらしい……
深刻そうな声が、そう物語っていた……。