第13章 ☆Story31☆ ホンモノのアイドル、ニセモノのアイドル
『お前は誰だ?』
「え……」
突然の憲吾の言葉に驚きを隠せないゆり、
ゆりはフリーズしたかのように固まった。
『お前……本当にゆりなのか?』
「っ私は藤ヶ谷ゆりだよ!?
人気アイドルグループのエースで……!!
どうしてそんなこと急に……」
『今のゆりは、俺の知ってるゆりじゃない。』
「っ何を根拠に……一体貴方は誰なの!?
何で私をそんな知ったかふうに言うの!」
『……悪いが、今のゆりと話す権利は俺にはない。
もしお前が俺の知っているゆりなら……
俺の質問には全部答えられるはずだ。』
「っ何それ……まるで、恋人みたいな!!
彼氏なんて、今の私には必要ないの!!」
『……そうか。
なら、もうこれ以上俺と話している必要はないな。
……俺からは、もう連絡しないから。』_プチッ
「っ……」
電話は向こうから切られてしまい
ゆりはスマホを持ったまま呆然とした。
「っ何なのよ……」
(この人は一体……)
とりあえずLINEのトーク画面を見返してみるゆり。
文面を見ればかなり親しい関係であることはわかった。
「でもこの人、一般人だよね……一般人に親しい人なんて、
要らないのに何でこの人と仲が良かったんだろ……はぁ、」
これ以上考えるのがめんどくさくなり、
ゆりはスマホをベッドに放り投げた。
「あーあ……早くライブやりたいなぁ……
ライブでみーんなを虜にするんだぁ♪だって私は……
みんなのアイドルなんだから!」
(みんなをいっぱい、愛してあげるからね♪)
どうやらゆりのアンドロイドはライブをはじめとする
アイドル活動には積極的のようだ。そしてゆりは
音楽プレイヤーを取り出しワイヤレスイヤホンを耳につけた。
「ライブまであと2日、歌もダンスも完璧にこなさないとね♪」
電源を入れ音楽を再生させるゆり、軽く口ずさみながら
ダンスを振り付け通りに踊り始めた。
「〜〜♪
(みんなが私を見てる、
みんな私が大好き……私は完璧なアイドル!!)
みんな、私"だけ" 見てればいいよ!!はははっ♪」
ゆりは狂ったように踊り始め曲を何曲か踊り終えると
力が抜けるようにベッドに倒れ込んだ。