第11章 ☆Story29☆ 夢に向かって
「っ……」
『太輔、私の手を取って?
ビジョンの最後の部分だけ見せてあげるから……』
「っそんなことが……でも、いいのか?」
『うん。私の口から聞くより、本人の口から聞いたほうがいいでしょ?』
「っ……わかった。
頼む、百合……」_ぎゅっ…
太輔は両手で百合の手を取った。
すると不思議なことに目の前が急に眩しくなり太輔はギュッと目を閉じた。
そしてしばらくして太輔はゆっくりと目を開けた……
「っ……さっきの光はなんだt…っ!?」
『……。』
太輔はギョッと目を大きく開いた。
なぜならそれは……
「っマジでやばいじゃん……ゆり辺り気をつけなよ?
色々巻き込まれてるし……」
「っそういう来海こそ……他のみんなだってそれは同じでしょ?
……日本に帰るまで、本当に油断できないよ……」
「怖いけど、私たちは予定通りリハやスケジュールをこなすしかないんだよね……?」
自分の目の前には、百合をはじめとするドルチェの姿があり
見覚えのある事務所の人達が大広間のようなところで
深刻な表情を浮かべていたからだ……。
「っゆり!!」
思わずゆりの元に駆け寄る太輔、だがゆりはおろか
他のみんなも太輔に気づく様子はない。
ゆり達は構わず会話を続けていた……。
「っ……これは、一体……」
『太輔、』
「っ百合!
これは、これは一体何なんだよ……何で、目の前にゆり達が……」
『目の前にいるゆり達は現実のゆり達じゃない。
叶輔が送ってくれたデータの中だよ。つまり、
過去の映像に入り込んでるって感じかな?もっとわかりやすく言えば、
上映中の映画スクリーンの中に入ってる感じ。』
「っ……だよ、な……いきなりソウルに飛んだわけじゃねぇんだよな……」
『うん……』
そして2人はゆり達の会話に耳を澄ませた……。