第10章 ☆Story28☆ 世界を目指して…
ゆりから届いたメッセージは……
【憲吾が大丈夫なら、
直接電話で話したいな】
【だめかな?】
「お前の方が、疲れてるくせに……」
【俺は大丈夫だ】
【むしろお前は大丈夫なのか?】
【うん!】
【憲吾の声、聞きたい】
「っ……」
ゆりも俺と似たようなことを思ってるんだと思うと、
嬉しい反面恥ずかしい……でもやっぱり、嬉しい……。
【分かった】
【俺から連絡入れる】
憲吾はコールボタンを押してゆりが出るのを待った。
ゆりはすぐ電話に出る、最初の一声さえも愛しく感じた。
『っ…もしもし憲吾?』
「あぁ、さっきぶり。
疲れとかは大丈夫か?」
『うん!憲吾の声聞いたら元気出たから!』
「っ……何だよそれ……」
コイツはこっちが恥ずかしくなるようなことを平気で言ってくる……
俺の気も知らねえで……
ゆりの言葉に顔が熱くなっていくのを感じた憲吾。
電話越しでもこんなに嬉しいなら
直接会った時はもっと嬉しいんだろうと思った。
だが次のゆりの発言に、憲吾は思わず固まってしまった。
『ホントだもん……さっき、藤ヶ谷さんと電話してたけど、
やっぱり憲吾の声落ち着くなって……』
「……。」
(っは……?)
電話……アイツともしてたのか……。
アイツなら、
いつものことだって思えるはずなのに……なぜかモヤモヤする。
多分……俺はアイツに嫉妬してる。
ゆりと、いつものように話してるだけのはずなのに……
花火大会で、アイツがゆりを抱きしめていた時よりも、
イライラしていることが自分でもわかった。
何でこんなにも……
憲吾はしばらく黙っているとゆりが声をかけた。
『憲吾……?』
「っ!」
憲吾はその声で我に返った。
っ俺としたことが……これくらいのことで……
今までもゆりとアイツは電話以外でも色々やりとりをしていた。
別にゆりは何も……
「っいや、何でもない……ちょっと、一瞬だけ空を見てたんだ。
さっきまで、流星群が流れてたから……」
そんなの嘘……
こんなことで動揺している俺を、ゆりに知られたくないんだ……。