第7章 『許すと、思う?』
「薔、さま…………?」
聞いたことないような低い声に、震えながら顔をあげる。
「なんでそんなに怯えてるの?華。僕が怖い?」
「そんな…………っ」
慌てて首をまた横に振るあたしに優しく微笑んで、薔さまはゆっくりと屈んで。
あたしの右足首を、自分の膝へと乗せた。
「…っ」
「そんなにこれ、嫌?」
足首に巻かれた黒い足枷のようなもの。
家から出た瞬間、ものすごい音が鳴り響く。
あたしを。
この家に閉じ込めて置くための道具。
「華が悪いんだよね?」
「…………っ」
ふくらはぎに、触れた唇。
撫でるように、指先が伝うのは太腿で。
ビクン、て。
体は警戒体制に入る。
「ごめんなさい…………っ、薔さま、ごめんなさい…っ」
「何が?僕を裏切ったこと?怒らせたこと?」
「薔さま…………っ、おねが…、いや…………っ」
ワンピースの裾を捲って、指先が、舌先が。
肌を這う。
ガシャーン、て。
テーブルの上のお食事が床へと散らばって。
かわりに乗せられたのは、もちろんあたし。
「薔、さま…………」
「ねぇ華、教えてあげる。涙も震えて怯える瞳も、僕にとっては興奮材料にしかなんないよ?もっと泣かせたいし、怯える姿もっと見たくなる。支配したくなる」
「そん、な…………っ」
「怖い?何されるかわかんなくて、怯えてる?」
「薔さま、ぃや…、いやですこんなの…………」
「何されるか、わかってるみたいだね。期待した?」
「ちが…、薔さまやだ」
笑いながら伸ばされた下着の中。
触れられてもないはずのそこからは、くちゅ、とたしかに聞こえた水の音。
「薔さま、違います、あたし…………っ」
こんなの。
違う。
なんで?
なんであたし。
こんなんじゃ嫌われてしまう。
薔さまに、ふしだらな女だって、嫌われてしまうのに。
「ああほんと、華は僕の理想そのものだね」
羞恥と絶望で涙が溢れたその時、薔さまがうっとりと呟いた一言に。
涙が一瞬にして渇いたような気が、しました。